人々は今この瞬間を生きているようで、実は過去のことや未来のことを頭の中で考え続けており、「心ここにあらず」の状態が多くの時間を占めています。
厄介な部分としては、ポジティブなことではなく、過去の失敗や将来の不安などネガティブなことほど頭の中で考える時間が長いことです。
これらの状態は、自分でストレスを増幅させてしまっており、長く続けば続けるほど精神状態が悪くなってしまいます。
そのため、心身のコンディションを整えることが大切になりますが、有効的な方法として期待されているのが「マインドフルネス」です。
今回は、マインドフルネスに取り組むことでどのような効果をもたらすのか、デメリットは何があげられるのか、具体的な取り組み方について紹介します。
特にストレスを軽減させたい、能力アップをしたいと思っている方はぜひ参考にしてみてください。
マインドフルネスとは?初心者向けに解説
マインドフルネス(Mindfulness)は、仏教の伝統的な瞑想の実践を基にした心理学的な概念であり、現在の瞬間の意識を意図的に持つことを指します。
過去の出来事や未来の予測に意識が偏らないようにし、目の前の瞬間に注意を向けることで感情や思考に対して非判断的な観察のスタンスを取ることを目指す方法です。
人々は自分自身が作り上げる頭の中ではおしゃべりが止まらず、ネガティブなことを考え続けることで不安な気持ちが強くなり、精神状態が不安定になってしまいます。
しかし、マインドフルネスを意識したトレーニングを行うことで、集中力がアップし、頭の中が明晰になり、メンタルの安定と強さをもたらしてくれるのです。
ここ最近では注目度も高く、医療分野のみならずビジネスの分野でも集中力や作業効率アップのために活用されるようになっています。
マインドフルネスを広めたジョン・カバット・ジンとは?
マインドフルネスの分野で重要な役割を果たした人物として知られているのがジョン・カバット・ジン(Jon Kabat Zinn)です。
ジョン・カバット・ジンは、アメリカの意思、心理学者、マインドフルネスの専門家であり、ストレス軽減や痛みの管理のためのマインドフルネスベースのストレス軽減法である「マインドフルネス・ベースド・ストレスリダクション(MBSR)」の創始者として知られています。
ジョン・カバット・ジンは、1979年にマサチューセッツ州でマインドフルネス・ベースド・ストレスリダクション(MBSR)のプログラムを立ち上げ、瞑想、ヨガ、ボディスキャンなどのマインドフルネスの実践を組み合わせて研究を行いました。その結果、マインドフルネスがストレスの軽減、心の健康促進、慢性痛の管理などに効果があることがわかり、大きな話題を集めることとなりました。
ジョン・カバット・ジンは、自身の研究後、国際的に講演を行い、マインドフルネスの普及に尽力しました。彼の貢献によって、現在ではマインドフルネスが一般的に認知され、さまざまな分野で広く応用されるようになっています。
マインドフルネスにはどのような効果があるのか?
マインドフルネスはさまざまな効果をもたらすと言われていますが、具体的な効果は何があげられるのでしょうか。ここでは誰でもマインドフルネスに取り組みたくなる魅力的な効果について紹介します。
ストレス解消
人々は少なからず日常生活や仕事、人間関係などでストレスを感じており、日々悩まされている方も多いでしょう。マインドフルネスは、そのストレスに対処するための有効なアプローチ方法として広く認識されています。
実践することで、過去の出来事や未来の予測に意識が偏らず、現在の瞬間のみに集中することができます。これによってストレスフルな状態であっても冷静に対処することができ、過度なストレス反応の抑制が可能です。
また、ストレスが引き起こされる要因の一つとして、イライラ感や焦りなどの不安な感情や、緊張状態があげられます。しかし、マインドフルネスを実践すれば、自分自身の思考や感情を客観的に観察し、受け入れることができます。そのため、自分自身でストレスの原因やその反応を深く理解し、適切な対処を行うことができるのです。
マインドフルネスは、さまざまなストレスに対応できるので、特にストレスを解消するための方法を探している方におすすめです。
眠りやすくなる
マインドフルネスにはリラクゼーション効果があるとされており、後述しますが瞑想や呼吸法によって良質な睡眠を促すことができます。
ストレスが溜まっていると寝つきが悪くなり睡眠の質を下げてしまいますが、マインドフルネスはストレスを軽減する効果があるため、心身がリラックスし、眠りに入りやすくなると言われています。
もし、過去や未来に対する不安や心配が気になってなかなか眠れない方は、マインドフルネスの実践についても検討してみてください。
集中力が高まる
マインドフルネスは、まさにいま現在の瞬間に意識を集中させることができるようになります。普通は、人間の注意力は過去の出来事や未来の心配事などに行きがちですが、マインドフルネスを実践すれば現在の状況に集中することが可能です。これにより、目の前の事だけに深く集中でき、生産性や効率を向上させることができます。
また、集中力が高まることで、自分自身の思考や感情を客観的に観察し、受け入れることにつながるため、心の中のノイズや不安な思考を減らすことにつながります。
抗炎症効果を得られる
不安や心配事を考える時間が長いと、交感神経の働きが強くなり、体にも悪影響をもたらしやすくなります。本来、交感神経と副交感神経はバランスを保つことで健康的な生活を送れますが、交感神経が優位になると自律神経のバランスを乱し、体調が悪くなる、眠れないなどさまざまな不調が出てきてしまうのです。
しかし、マインドフルネスを実践すると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を調整し、免疫系の過剰な炎症反応を抑制します。さらに、神経分泌システムと自律神経系を調整し、炎症関連のサイトカインのバランスを改善することが可能です。また、心身のリラクゼーションを促進するため、炎症に関連するストレスや不快感を軽減できます。
これにより、慢性的な炎症状態や炎症関連の疾患のリスクが低下し、免疫系の正常な機能をサポートすることができると言われています。継続的なマインドフルネスの実践は、抗炎症効果を最大化するために重要であり、健康と免疫の維持に役立つのです。
仕事の効率化につながる
人々の不安な感情や心配事は、集中力の低下につながり、時には効率よく仕事に取り組めなくなることがあります。
これらの悩み事を解消するためには、マインドフルネスの実践がおすすめです。集中力やストレス管理の向上、クリエイティビティの促進など、さまざまな効果を発揮するのがマインドフルネスです。
実践することで仕事の効率化にもつなげられるため、特にネガティブな感情が多く、仕事に集中できないと悩んでいるならマインドフルネスに取り組んでみてください。
自分を思いやる行動をとれる
マインドフルネスを実践することで、自分自身の感情や思考を客観的に観察し、内面の反応にも気づけるようになります。特に厄介であるネガティブな思考を素直に受け止めることができ、自分を思いやる行動を取れるようになります。
また、過去の過ちや未来への不安にとらわれず、今この瞬間に集中することで自分自身を受け入れることができます。自己批判や自己評価にとらわれることなく、自分自身を理解し、受け入れることで自尊心や自己価値観を高めることにつながります。
その結果、自分自身を思いやる行動が取れることで自己の健康や幸福を優先でき、自分自身のケアに積極的に取り組めるようになるのです。
マインドフルネスのデメリット
これまでマインドフルネスのメリットを書いてきましたが、中にはデメリットとなる部分もありますので、実践を検討されている方は、どのような注意点があるのかも把握しながら取り組んでみてください。
マインドフルネスへの依存
1つ目の注意点としてあげられるのが、マインドフルネスへの依存です。信じすぎることによって「マインドフルネスを実践しなければ何も集中できない」「実践することを忘れると今まで以上に不安な感情が増す」など、依存が起きてしまうことがあるようです。
そのため、過度に長時間取り組んだり、効果の信じすぎはかえって自分自身を追い込んでしまう原因の一つとなるため、無理をせず取り組むことが大切です。
マインドフルネスはあくまでも問題解決や自己成長のためのサポートとして活用することが大切なので、現実逃避等の手段として活用したり、過度の依存したりするのは注意をしなければなりません。
不安の増大
一般的にマインドフルネスは不安の軽減に役立つことが多いです。しかし、個人差があるため、一部の人にとっては実践することで不安を増大させる可能性もあります。
その理由の一つとして、マインドフルネスは自己観察や感情への注意を促すため、不安やネガティブな思考パターンにも気づくことがあります。一部の人によっては、このような意識が高まることでかえって不安を増大させることもあるようです。
このように、人々の感情やストレス反応はさまざまなので、実践することで不安が増大してしまう人は無理に続けない方が良いのかもしれません。
マインドフルネスの効果を期待しすぎてしまう
マインドフルネスの効果を期待しすぎてしまうことは、実際の結果とのギャップや失望感を生む可能性があります。
効果は人それぞれ差があるため、自分自身にあった目標を設定し、それに向けて実践することが大切です。実践する際には、効果を期待する一方で、ゆっくりと進めることを忘れずにしてください。
また、すぐに効果が出ると期待しすぎるのも注意が必要です。マインドフルネスには継続的な実践が必要となります。基本的に即効性を期待するものではなく、効果を得るためには慣れることも必要であるため時間がかかります。長期的な変化や成長を期待することで、より現実的な見方ができるようになるでしょう。
マインドフルネスのデメリットを回避する3つの方法
マインドフルネスにおけるデメリットを回避するためには、大きく分けると3つの方法があげられますので参考にしてみてください。
自分の呼吸に集中して意識を自分に向けること
マインドフルネスのデメリットを回避するためには、とにかく「呼吸」に集中することです。特に目を閉じると心配事などさまざまなことを考えてしまいがちな方は、ただ単に呼吸をして気持ちを落ち着かせるのではなく、毎回の呼吸に意識を傾け、自分を客観的にイメージするようにしてください。
そうすることで集中しなければならないといった義務感が出るのではなく、呼吸と共に自分と向き合うことができるため、気が散りにくくなります。また、余分なことを考えなくなれば、マインドフルネスにおけるリラックス効果も感じやすくなるでしょう。
負担にならない範囲で継続すること
マインドフルネスを「実践しなければならない」といった気持ちは、かえってストレスが感じやすくなる要因の一つとなります。
そのため、まず大前提として負担にならない範囲で継続することが大切です。例えば、これから取り組もうと思っている方は、最初から長時間取り組むのではなく、1日5分、10分など短い時間から始めるのがおすすめです。
どれだけ忙しい方でも数分程度の時間なら確保しやすく、負担のない範囲で取り組みやすくなるでしょう。
長時間取り組むことは負担が大きくなり、長期的に取り組むことができなくなる要因の一つにもなるため、コツコツと取り組むよう意識してください。そうすることでかえって負担になり、不安が増大するなどの現象も減ります。無理をしないことだけは頭に入れて取り組むようにしましょう。
明るさ・快適な空調でマインドフルネスを行うこと
マインドフルネスに取り組む方は、環境にも注意しながら行ってください。特に注意したいポイントの一つとしては、明るさなど部屋の環境を整えることです。
実践するにあたって、なるべく暗い部屋で取り組もうとする方もいますが、暗い部屋は副交感神経が働きすぎてしまい、眠気が発生して集中できない要因の一つとなります。そのため、真っ暗にするのではなく、明るさのある環境を用意することが大切です。
また、空調にも注意しましょう。例えば夏場でエアコンをつけずにマインドフルネスに取り組んでしまうと、熱中症の危険もありますし、暑さがストレスを増大させる可能性があります。
逆にあまりにも寒い環境もよくありませんが、自分が過ごしやすい温度や湿度に調整して取り組むようにしましょう。
マインドフルネスの具体的なやり方
ここからは、マインドフルネスを実践してみようと考えている方に向け、具体的な実践方法を紹介します。実践方法にはさまざまな種類がありますので、取り組もうと考えている方は、自分自身に適した方法をセレクトしてみてください。
呼吸瞑想
マインドフルネスの呼吸瞑想は、マインドフルネス瞑想の一形式であり、最もスタンダードな実践方法です。呼吸瞑想は、呼吸に意識を集中する瞑想方法で、呼吸を通じて現在の状態に意識を向け、心と体の状態を観察し、受け入れることが目的です。
呼吸瞑想は、日常生活の中で行うことができる最も簡単な瞑想方法です。基本的には静かな場所で座りながらできる環境があれば誰でも取り組むことができます。
呼吸瞑想を行う際には、呼吸に意識を集中するよう取り組んでください。自然な呼吸に注目し、息を感じましょう。吸う息と吐く息の感覚、息の出入りのリズムに集中することで余分なことに気が散ることなく、今を集中できるようになります。
瞑想中にはさまざまな思考や感情が浮かんでくるかと思いますが、それらを観察し、受け入れることで心の平穏さやストレスの軽減、集中力の向上などの効果が期待できるでしょう。
歩行瞑想
マインドフルネスを実践するにあたって、適した部屋の環境を用意できない方や、じっとしていることが苦手な方におすすめなのが歩行瞑想です。
歩行瞑想は、歩くことを意識的に行いながら、身体の感覚や周囲の環境に注意を向ける実践方法です。
通常の歩行を行うのではなく、一歩進むごとに自分の感覚や呼吸、足の接地感、歩く音などに意識を集中させます。
歩行瞑想は、庭や公園など、ちょっとしたスペースがあれば問題なく行えます。また、屋内でも歩くスペースがあれば行えるので、わざわざ外に出て取り組みたくない場合は部屋の中でも実践できます。
特にウォーキングなど、運動をしながら取り組みたい方にとってはおすすめなので、ぜひ試してみてください。
食事瞑想
マインドフルネスの食事瞑想は、食事を通して現在の状態に意識を向け、食べ物の味や食べる行為そのものを深く体験することを目的とした瞑想の方法です。
ただ静かに食べ続けるのではなく、食事の瞬間をより意識的に集中することが重要とされています。例えば食べ物を口に入れて噛むことだけではなく、食べる前に色や形、香りを意識し、感じることから始めます。
そして、一口食べる前には食べ物の感触や温度を感じましょう。また、口に入れた瞬間に味覚や舌の感覚に集中します。その後に実際に食べ物を噛みながら食べる行為に意識を集中させます。咀嚼もしっかりと行うことで味や食感をより深く感じることができます。
このような一連の流れを丁寧に行うことで、食べる行為自体に集中することができ、ストレスや不安な気持ちの解消につながります。
慈悲瞑想
慈悲瞑想は、自分自身と他者への思いやりや慈しみを培うための瞑想方法です。主に慈悲の心を育むことが目的とされています。
慈悲瞑想は、呼吸瞑想と取り組み方はそれほど大きく変わりません。しかし、自己への慈悲を育むため、自分自身に対して愛や思いやりを感じる言葉やイメージを思い浮かべます。例えば、「私は自分を愛し、思いやりを持ちます」などのように、これらの言葉を心の中で繰り返します。
また、他者に対しても愛や慈しみを向けます。自分自身の家族や友人、仕事の同僚などでも構いません。心の中で他者への幸福や平安を願い、愛や慈しみのエネルギーを送りましょう。
慈悲瞑想は、続けることで自己への思いやりや、他者への感謝の気持ちなどを考えることができるようになります。継続することで自己成長や他者との関係向上につなげられるなど、さまざまなメリットがありますので試してみてください。
ボディスキャン瞑想
自律神経が乱れやすい、夜に寝付けない、肌荒れが起こるなど、原因不明の不調が現れている時は、交感神経が過剰に働いている可能性があります。
これらの症状で悩まされており、気になって集中できない方におすすめなのがボディスキャン瞑想と呼ばれるものです。
ボディスキャン瞑想とは、体を読み取るという名前からイメージできるように、体の各部位に意識を向ける瞑想方法です。指示された体の部位に集中させる瞑想で、特別に分析などをする必要はなく、ありのままの状態を観察するというマインドフルネス瞑想の一種です。
ボディスキャン瞑想の取り組み方は、それほど難しくありません。基本的には座って姿勢を整え、自然な呼吸を観察します。この2つの動作を繰り返すようにし、意識がそれたら意識を呼吸に戻すようにしてください。
特にやり始めは、雑念や考え事が浮かんでくることが多いため、考えすぎないようにするためにも意識を呼吸に戻すことが大切です。
ボディスキャン瞑想は、5分、10分程度でも取り組めるマインドフルネス瞑想の一つなので、時間のない方でも取り組みやすい特徴があります。ふと気がついた時に取り組めますので、ぜひ挑戦してみてください。
まとめ
今回は近年、注目を集めているマインドフルネスについて紹介しました。現代社会はさまざまな生活スタイルがあり、不安やストレスを抱えながら過ごしている方も多いでしょう。特にストレスは身体へのダメージが大きく、時には体調を悪くする要因の一つにもなるなど、できる限り溜めたくはないものです。
ストレスを解消させたり、集中力をアップさせたりする方法はさまざまですが、それらの解消や成長につなげられる方法の一つがマインドフルネスです。
誰でも気軽に取り組むことができ、さまざまな効果を得ることが期待できるため、特に不安やストレスを感じすぎて集中力が低下していたり、体調が優れない方は、マインドフルネスにチャレンジしてみてください。