近頃、外食チェーン店を中心に客による迷惑行為が問題となっています。大手回転寿司チェーン店の『スシロー』では、醤油差しや湯呑みをなめてもとの位置に戻すという動画が拡散され、そのあまりにモラルのない行動が大きな話題となりました。
今回の件に限らず、近年では様々な場面でモラルの低下が指摘されています。モラルがない、モラルが欠けた行動など、ビジネスに限らず日常でもよく耳にする言葉ですが、皆さんはその意味を正しく理解しているでしょうか。
この記事では、モラルが持つ意味と社会人として持つべきモラルを解説します。モラルを正しく理解して、自分自身の日ごろの行動がモラルに欠ける行動になっていないか確認しましょう。
モラルとは?本来の意味を分かりやすく解説!
モラルの本来の意味
「モラル」は英語の「moral」からくる言葉で、人々が正しい行動をするために守らなければならない規範を指す「道徳」や、社会において人々が守るべき規範を示す「倫理」を指します。もともとはラテン語の「モーレス」が起源となっており、習俗・風習、集団生活での掟を意味します。
「モラル」は社会規範の一種ではありますが、法律などのような決まり事ではなく、社会において集団生活する上で、人々がわきまえるべき善悪の判断基準そのものを指します。
モラルの使い方と例
それでは実際に「モラル」を使った言葉と例文を見ていきましょう。
モラルがある
「モラルがある」とは、言葉の通り倫理観や道徳を持っているということを表します。
【例文】
彼はモラルのある人間だ。
たとえ匿名の場でもモラルのある行動を心がけよう。
モラルがない
「モラルがない」は、倫理や道徳心が一般的に見て失われていることを表します。
【例文】
彼の行為は違法ではないかもしれないが、モラルがない行為だ。
SNSでは、その匿名性によりモラルがない行動が行われやすい。
モラルを守る
「モラルを守る」は道徳から外れることなく、倫理的に行動することを表します。
【例文】
社会人としてモラルを守った行動が大切だ。
子供たちにモラルを守ることの大切さを伝える。
情報モラル
「情報モラル」は、現代の情報化社会で適切に活動するための倫理を意味する言葉です。特に、インターネットの利用によって、自分や他人を危険にさらすことのないようにするための考え方や道徳上の規範を指します。
【情報モラル違反の例】
他人の制作物を無断でネットにアップロードする。
SNS上で有名人の誹謗中傷を行う。
「マナー」との違い
皆さんはモラルとマナーの違いをご存じでしょうか?どちらもよく聞く言葉ですが、意味の違いを正確に理解している方は少ないかもしれません。「モラル」は「マナー」とはやや意味合いが異なります。
「モラル」は、先に述べた通り、「善悪を判断する基準」そのものを指しますが、「マナー」は社会や組織などによって客観的に決められたルールを意味します。
モラルに欠けると言われる人の特徴6選
他人から「モラルがない」「モラルに欠ける」と思われると、信用を失いかねません。ここでは、モラルがないと思われてしまう行動を6つ紹介します。自分の行動を振り返り、当てはまるものがないか確認してみましょう。
約束を守らない
モラルがない人は自分の都合を優先して行動するため、友人との待ち合わせに遅刻したり、前からしていた約束をドタキャンしたりすることもあります。
最初は笑って許してくれる事もあるかもしれませんが、何度も続くと印象が悪くなったり、今後の付き合いを避けられてしまうでしょう。
保身のために嘘をつく
他人よりも自分のことを大事に考えることも、モラルがない人の特徴の一つです。例えば仕事で自分がミスをして問題になったときにも、言い訳をし、原因や責任を転嫁しようとします。
場合によっては嘘をついてほかの人に罪をなすりつけることさえも罪悪感を覚えない人もいるでしょう。
責任感がない
モラルがない人は、責任感が低い傾向にあります。自分がやらなくてもほかの人がやるだろうといった無責任な行動をとることもあります。
人の悪口を言う
人の悪口を言うと、モラルのない人だと他人から思われる可能性が高いでしょう。
悪口を言っていることへの印象の悪さだけではなく、「ほかの場所では私も悪口を言われているのだろう」と、周囲から人が離れてしまうことも少なくありません。
相手を思いやる気持ちが薄い
自分中心で物事を考え、他人の気持ちへの配慮ができないこともモラルに欠ける人の特徴です。
相手の立場に立って物事を考える意識が薄いため、相手が聞かれたくないプライベートな話にも平気で触れてくることがあります。
謝ることができない
何か自分がミスや間違ったことをした際に謝らない人は、モラルに欠ける人と言われてしまうでしょう。
ミスをした後にすぐに謝罪をすれば、後に信頼を回復することもできますが、謝罪もしないモラルのない人だと一度思われると、信頼を回復することは難しいでしょう。
ビジネスシーンにおけるモラルとは
一般的なモラルとは、状況や人によって変化しうるものでもありますが、ビジネスシーンにおいては守るべきモラルが存在します。
ここでは、社会人、また企業が守るべきモラルについて解説します。
社会人として守るべきモラル
法令・ガイドライン
ビジネスにおいて、法律はもちろん、業界のガイドラインを守ることは重要なことです。法令やガイドラインを意識した活動を行わないと、無自覚に不正を行ってしまいかねません。
例えば、化粧品や医薬品など専門性の高い業務では、知らなかったでは済まされないことも多くあるため、薬機法や景品表示法を良く確認する必要があります。
服務規律
従業員が守るべきルールや義務を定めた服務規律を遵守することも、モラルを逸脱しないためにはとても重要なことです。
一見、面倒だと思うようなことだとしても、職場の秩序や企業のコンプライアンスを遵守するために必要なものになりますので、しっかり守るようにしましょう。
一般的に服務規律は就業規則に含まれているので、改めて確認してみましょう。
ビジネスマナー
ビジネスマナーとは、仕事を行う上で必要な配慮や礼儀作法のことを指します。一般的には、下記のようなものがあげられます。
- 言葉遣い
- 身だしなみ
- 電話対応
- 名刺交換
社内外の様々な立場の人とかかわりを持つビジネスシーンでは、信頼関係の構築のためにもビジネスマナーが必須となります。正しいビジネスマナーを持ってると、コミュニケーションも円滑になるため、スムーズにビジネスを行うことができるでしょう。
他者への尊重
業務を行う上で、場合によっては注意や叱責などは必要なことです。但し、それは必要かつ適切な範囲で行われるものに限ります。人格否定など業務上の適切な範囲を超えた叱責は、パワーハラスメント(パワハラ)や、モラルハラスメント(モラハラ)とみなされることがあります。
本人に悪意がなくとも、パワハラやモラハラをしてしまうことがあるため、常に相手の立場に立った視点を持ち、他者への尊重を忘れないことが重要です。
一般的なマナー
ビジネスシーンにおいても、一般的なマナーを忘れてはいけません。
特に立場があがったり、勤続年数が長くなってくると、部下や後輩への礼節を忘れてしまう人もいますが、仕事でかかわるすべての人に対して、挨拶をする、時間を守るなど、一般的なマナーを忘れないようにしましょう。
企業としてのモラル
社会人としてのモラルだけではなく、企業としてのモラルも把握しておきましょう。ここでは企業としてのモラルを7つ紹介します。
コンプライアンス
コンプライアンスとは「法令遵守」を意味する言葉ですが、ただ法律を守ればよいということではありません。
現在企業に求められているコンプライアンスは、法律の遵守にとどまらず、社会規範や社会道徳、会社のステークホルダーの利益にかなうことにまで広がっています。法令に違反していなくとも、道徳に反していると思われる行動は社会的にも批判を集めやすくなっているといえるでしょう。
環境対策
温室効果ガスによる地球温暖化をはじめとして、環境問題は世界的な課題となっています。温室効果ガスに占める割合が最も多い二酸化炭素は多くが企業活動のなかで発生しており、企業の環境への取り組みは欠かせないものとなりました。
自社の売上・利益の達成のみ実現できればよいと、環境に負荷を与える事業を続けてしまうと、将来必要な資源を調達できなくなってしまうでしょう。企業には様々な場面での環境対策が求められています。
また、近年では企業が長期的に成長するためには、経営においてESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))の観点が必要だという考え方も広まっています。
情報セキュリティ対策
情報技術の向上により、多くの企業では様々な情報を活用する場面が増えてきました。その一方で、ウイルス感染や情報漏洩など、企業の存続を脅かすような情報セキュリティ上のリスクも様々です。
これらのリスクに対して必要な対策を講じておくことは、企業としての責務です。あらかじめセキュリティ対策の規則を定めたり、社員への教育を行ったりする必要があるでしょう。
ユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインとは、年齢・性別・文化・身体の状況など人々が持つ様々な個性や違いに関わらず、できるだけ多くの人が利用できることを目指した設計のことを指します。
企業の商品開発の際にも誰にとっても使いやすいユニバーサルデザインを基本とする会社が増えています。
知的財産の保護
企業が持つ知的財産、そして第三者が持つ知的財産を保護することも企業のモラルの一つです。
株式会社リクルートでは、第三者が持つ知的財産の保護について下記のように述べています。
私たちは顧客の知的財産と、私たちの事業を支えてくれる協力関係者の知的財産を保護するように努めます。
業務を進めるにあたり、顧客や協力関係者から貴重な情報や著作物等が提供されます。これらのものは関係者の時間と費用と努力の結果創造された知的活動の成果であり、その所有者の権利は最大限保護されなければなりません。
近年では、著作者の許可を得ていないイラストのトレースなど、著作権侵害を疑われる事例が多く発生し、批判を集めています。
企業においても、第三者の権利を侵害しないよう慎重な活動が求められます。
社会貢献
企業には、自社の利益を求めるだけでなく、社会や地域住民などに何らかの利益を与える社会貢献活動も期待されています。社会貢献の例としては、寄付などの資金的支援、社員によるボランティア活動などの人的支援があげられます。
企業が社会貢献活動を行うことで、ブランドイメージを向上させることにもつながるでしょう。
人権尊重
性別や国籍による不当な差別や、海外の取引先の劣悪な労働環境などの人権侵害を行わないことも、企業に求められる重要なモラルの一つです。
企業全体で人権尊重ができているか、研修などを通した意識づけが重要となります。
なぜモラルがない人が増えたと言われるのか
ここまで、モラルとは何か、なぜモラルに欠ける行動をとってはいけないかについて解説してきました。中には、そんなこと当たり前だろうと思う内容もあったのではないでしょうか?
しかし冒頭に述べたように、モラルに反した迷惑行為が問題となるケースが後を絶ちません。それではなぜモラルがない人が増えたのでしょうか?
要因の一つとして、ソーシャルメディア(SNS)の普及がもたらす変化があるのではないかと考えられます。
総務省が平成27年に行った調査では、SNSを利用する際に、「本人の許可なく他人の個人情報やプライバシーに関する情報を書かない」などの一般的な注意事項にどの程度気をつけているかという質問に対して、「あまり気をつけていない」や「気をつけていない」と回答した20代の人の比率が他の年代に比べてやや高いといった結果になりました。
ソーシャルメディアでは、1度の気軽な投稿が、一瞬で世界中に拡散されてしまいます。物事の分別が十分につく前からソーシャルメディアに触れてきたことで、これまでは身内だけの悪ふざけだったことが、多くの人の目に触れ、モラルのない人が増えたとより感じさせる要因になっているのはないかと推測されます。
参考:総務省|平成27年版 情報通信白書|SNS利用における課題
まとめ
「モラル」という言葉は、日常的によく使われる言葉ですが、その意味や、なぜ守らなければいけないのかを正しく理解できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
モラルに欠けた行動は、これまで積み上げてきた信頼を壊してしまうことにつながりかねません。ぜひ皆さんも、本記事で解説したモラルに欠ける行動を行わないように意識して行動しましょう。