アナロジー思考とは、異なる物事の間にある共通点に着目し、解決策を見いだす思考法のことです。自分自身がすでに知っている情報や、体験したことのある経験を、経験したことのない分野に当てはめることで、新たな発想が生まれやすくなります。
今回は、アナロジー思考の概要から、活用することで得られるメリット、身につけ方について詳しく紹介します。
アナロジー思考をもっと深く知りたい、マスターしたい人にとっておすすめの内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。
アナロジー思考とは?
アナロジー思考とは、2つ以上の物事の間にある共通点に着目し、解決策を見いだしたり、新たな発想を考える際に活用される思考法です。
そもそもアナロジーとは「類推」という意味を持っています。類推とは、一見違うような事柄のように見えても、その中には共通点など同じ要素が含まれているという意味です。
特に新しいアイデアを考えることが得意な人はアナロジー思考が高いと言われています。また、アナロジー思考が高い傾向にある人は、応用力も高いため、幅広い場面で能力を発揮できるようになります。特にビジネスの分野ではなくてはならない大切な思考の一つです。
メタファーとの違いとは?
アナロジーとメタファーは混同して使われる傾向がありますが、異なる意味を持っています。具体的な違いとしては、アナロジーは「類推」を表現するのに使う言葉なのに対し、メタファーは「比喩」を表現するときに使う言葉です。
「比喩」とは、「物事の説明を印象強くするために、他の類似した物事を借りて表現すること」です。
つまり、アナロジーは「ロジック」の類似性を元に当てはめるのに対し、メタファーは「見た目」の類似性を元に当てはめる表現です。2つの言葉は同じように見えて異なる意味を持つので、混同しないように注意しましょう。
ラテラルシンキングとの違いとは?
アナロジー思考はラテラルシンキングと同じではないかと勘違いされることがありますが、どちらも似ているようで異なる意味を持っているので注意しましょう。
アナロジー思考は、2つの事柄の類似点を探すことで、新しいアイデアを生み出す方法です。一方、ラテラルシンキングは固定観念や既存の理論にとらわれず、新しいアイデアを生み出す思考法となります。
両者を比べると新しいアイデアを生み出す点では似ていますが、アナロジー思考はすでに持っている知識や経験を活用できます。つまり、ゼロの状態から新しいものを生み出すわけではないので、ラテラルシンキングよりも新しいアイデアを見つけるのに時間をかけずに進められるでしょう。
しかし、ラテラルシンキングは固定観念や既存の理論にとらわれず、直感的で斬新な発想が必要となるため、アナロジー思考と比べると結論が出るまでには時間がかかるでしょう。
ラテラルシンキングについてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事でも紹介しているので、そちらもチェックしてみてください。
アナロジー思考によって得られるメリット6選
アナロジー思考を身につけることによって、「何に役立つの?」「メリットは?」と気になっている方が多いでしょう。
ここでは身につけることで得られるメリットを具体的に紹介するので、参考にしてみてください。
新たなアイデアを生み出しやすい
アナロジー思考を身につけることによって、構造的な共通点を見いだす習慣をつけられます。それにより、新しいアイデアを生み出しやすいといった効果があります。
そもそも新しいアイデアは、ゼロの状態から一生懸命頭の中で考えて生み出すケースは少ないとされており、基本は既存のものを応用し、組み合わせることで新たなアイデアが生まれてきます。
アイデアは今まで体験したことのある経験の延長線上で考えるのではなく、アナロジー思考を活用することで今までとは全く異なる分野の例を考えられるようになるため、今までになかった革新的なアイデアを考えられるようになるのです。
革新的なアイデアを考え出すことができれば、ビジネスにおいても成功を掴めるチャンスとなるため、特にビジネスパーソンは身につけておきたい思考法の一つとなります。
インプットとアウトプットの量が飛躍的に増える
アナロジー思考は、インプットからの学びと、アウトプットからの学びの両方を通して新しい発想をしていく思考法です。
アナロジー思考の本質は応用であるため、習慣化できれば自分が知っている領域だけではなく、それ以外の領域からも情報をインプットできるようになるのです。
そして、インプットから得た情報が多ければ多いほど、さまざまな答えを出すことができます。アウトプットできる量も飛躍的に増やせるため、自分自身の大きな成長にもつなげられるでしょう。
知見のないテーマでも周りの会話についていきやすい
アナロジー思考は、ある事柄をもとに他の事柄を推論する思考法であるため、知らないテーマだったとしても周りの会話に自然とついていくことが可能になります。
例えば、野球とサッカーではスポーツとして全く異なる競技です。しかし、どちらも点を多く入れた方が勝つという点で共通しています。そのため、サッカーについて全く知らなくても、野球を例に出して考えることで会話にもついてきやすくなります。
さまざまな話題に対応することができれば、自然な返答ができたり、会話の雰囲気も悪くなりにくくなるメリットがあります。対応範囲が広くなれば、ビジネスシーンのみならず、友人との会話など日常生活にも役立てることができるのです。
物事の理解度が高まる
一般的にアナロジー思考を身につけている人は、頭の回転も良いと言われています。その理由の一つに、アナロジー思考を活用することで今までにない視点や観点で物事を把握しようとする力が身につくからです。
このような新しい視点を持つことによって、物事を考える基準などにも変化が起き、結果として物事の理解度が高くなります。
また、アナロジー思考を身につけることで物事を理解するまでの時間が短いため、成長も早いと言われています。理解力を高め、早く成長するためにもアナロジー思考は必要不可欠なスキルと言えます。
物事をわかりやすく伝えられる
アナロジー思考を身につけることで、物事をわかりやすく伝えられるようになります。その理由としては、物事を説明する際、他の事柄と比較して説明できるため、よりわかりやすく相手に伝えられるからです。
例えば新しいサービスをお客様に向けて販売したい場合、新しいサービスの概要を淡々と説明しても、お客様はそのサービスについて全く知らないため、うまく伝わらないこともあります。
しかし、アナロジー思考を身につけている人は、お客様が今使用しているサービスと比較して説明し、「どの機能がよくなったのか」「料金の比較」など、納得できる説明ができるのです。
このように、他の事柄と比較して説明できる能力が身につくため、物事をわかりやすく伝えられるように説明したい場合は、アナロジー思考を身につけることがおすすめです。
問題解消に役立つ
アナロジー思考は、ある問題を抱えている場合、別の分野に応用を利かせることで問題解決に役立てられるといったメリットがあります。
例えば仕事における問題が発生した場合、他の企業の成功事例を参考にすることで問題の解決につなげることも可能です。
あくまでも一例ですが、アナロジー思考を持っていると他の事柄と比較して問題解決をしようとする力が身につくため、ビジネスシーンのみならず幅広い場面での問題解決に役立ちます。
効率よく問題を解決したい、そのような場面にもアナロジー思考は役立つので、身につけておいて損はない思考法の一つです。
アナロジー思考の注意点
アナロジー思考を身につければ、自分にとってメリットとなる部分の方が多いでしょう。しかし、いくつか注意点となる部分もあるため、そちらの紹介もしていきます。
身に付けるまでに時間がかかる
アナロジー思考は魅力的なスキルですが、身につけるまでには時間がかかることが予想されます。特に最初のうちは苦労することが多く、2つの事柄の類似点を身につけられないと悩むことが多いでしょう。
そのため、トレーニングをすればすぐに身につけられるスキルではありません。思考を習慣化することが大切となり、長期的なトレーニングが必要になります。
アナロジー思考を身につけたい方は、慣れるまでには時間がかかることは頭に入れておくと挫折もしにくいでしょう。
相違点を認識することも重要
アナロジー思考では、共通点を探すことが重要であるため、その部分ばかりを考えてしまいがちです。しかし、有効的に活用するためには共通点だけではなく、相違点も明確にすることが大切となります。
また、共通点と相違点を認識する際には、目的に応じて変化することにも注意が必要です。例えば「男性」と「女性」は、目的によっては一人の人として扱うことができますが、化粧品の消費量といった観点から見れば、全く違うものにも見ることができます。
このように、共通点と相違点のどちらも認識することが大切であり、共通点ばかり探していてもアナロジー思考を身につけることができません。
この思考を身につけるためにはさまざまなことを考える必要があり、難易度が高いとも言えるでしょう。
アナロジー思考はあくまでも別のところから知恵を借りるということ
アナロジー思考は、ラテラルシンキングとは異なり、あくまでも別のところから知恵を借りることであり、簡単に言えば模倣です。
他からアイデアを借りることになるため、ゼロの状態から考える発想力は必要なく、身につけることで誰でもアナロジー思考により新しい発想を考えることができます。
また、前例があることなので見通しがつき、成功事例を真似することでそれなりの成果が出やすいのも特徴の一つです。つまり、ローリスクな点はアナロジー思考のメリットでしょう。
その反面、ラテラルシンキングのような斬新的なアイデアではないため、弱点としてはローリターンであることです。すでにある知識や技術であるため、先例を超える可能性は極めて低いと言われています。
これらの点はアナロジー思考の注意すべき点です。そのため、アイデアを借りるだけでも良い場面ではアナロジー思考を活用し、今までにない斬新なアイデアを求めている場合は、ラテラルシンキングを身につけるなど、状況に応じて使い分けると良いでしょう。
アナロジー思考を身に付けるための6つのポイント
アナロジー思考を身につけることでさまざまな場面に役立てることができますが、自分のものにするためには少々時間がかかることも紹介しました。
ここでは効率よくアナロジー思考を身につけるために、特に重視しておきたいポイントを6つ紹介します。
日頃から視点を増やすように意識する
アナロジー思考を身につけるために重視したいポイントの一つとして、日頃から視点を増やすように意識することがあげられます。そのためには観察力や注意力が必要です。
観察力を身につけるためには注意力が重要であり、鍛えるためには日常の物事をすべて「当たり前」と思わないことが大切です。
例えば経験や慣れによる当たり前は、あなたの注意力を下げ、観察力を曇らせてしまう要因の一つにもなります。
観察力や注意力を鍛えるためにはさまざまな方法がありますが、誰でも簡単にできるものとして、「周囲の環境や人々をよく観察する」ことがあげられます。
例えばただ単に「人がいるな」ではなく、その人がどのような行動をしているのか、何を手に持っているのか、その手に持っているものは何に使うのかなど、細かく観察することで一つの出来事からさまざまな情報を集められるようになります。
意識的に取り組むことで自然と力が鍛えられるようになるため、日頃から視点を増やすよう意識して生活してみてください。
抽象化する
アナロジー思考を実践するうえで大切なことの一つに、抽象化することがあげられます。
例えば2つの事柄から類似する点を見つけたとします。ただ見つけるだけでは意味がなく、その共通点を一言で言えばどう表現できるか考えるようにしましょう。
「要するにどういうことか?」「この共通点は何を意味するのか」など、抽象化しておくことで応用がしやすくなり、よりアナロジー思考を鍛えることができるので、日頃から意識するよう心がけましょう。
物事の構造や共通点と相違点を探す訓練をする
アナロジー思考を身につけるためには、物事の構造や共通点を探すことが大切です。例えば自分が勤めている企業で2つの商品を取り扱っている場合、それらの共通点や相違点などを意識して見つけるようにしましょう。
ただ単に「うちの売れている商品」だけで終わらせてしまうと、なぜ人気商品となっているのか、具体的なことまで理解することはできません。
細かく探っていくと、「販売戦略に工夫がされている」とか「売れている商品は特徴が似ている」など、詳細なことまでわかるようになってきます。
このような訓練を日常的に行うことで、ただ1日が過ぎていくだけではなく、新しい発見にもつながります。アナロジー思考を身につけられるだけではなく、より自分を成長させることもできるため、日頃から意識して取り組んでみてください。
さまざまなことを経験する
アナロジー思考は、異なる点と点がつながることで共通する本質的な部分が見えてくるようになります。
そのため、あまりにも持っている知識が薄いと、表面的な部分は理解できるものの、深く掘り下げて「奥にある本質は何か」「抽象度を上げると何を意味するのか」という点が考えられなくなります。
共通する本質的な部分を見えるようにするためには、やはり経験をして引き出しを多くするしかありません。
例えば今まで挑戦したことのない分野の経験もするなど、幅広いことに挑戦することもアナロジー思考を身につけるためには必要です。
ダブルループ学習を取り入れる
ダブルループ学習とは、既存の枠組みを取り払うことで、今まで行ってきた行動や考え方にとらわれず、新しい行動や考え方を取り入れる学習プロセスです。過去の成功体験に縛られることなく、常に新しい発想や行動をしていくため、個人や組織が成長するために必要不可欠な学習方法と言われています。
アナロジー思考を身につけるためにはダブルループ学習を取り入れることが大切であり、その理由としては常識にとらわれずに物事を組み合わせる発想が、アナロジー思考に必要だからです。
取り組むことで前例や習慣にとらわれない問題解決の方法を考えられるようになったり、目標や条件そのものを設定し直すことで、今までよりも急速に成長速度がアップすることも期待できます。
別の何かに例えられないか意識する
アナロジー思考を身につけるためには、別の何かに例えられないか意識しながら行動することも重要です。
例えば大人に商品の説明をするとき、ある程度専門用語を使用しても理解してもらえるでしょう。しかし、小さな子どもにそれを説明しても理解してもらえません。
専門用語は使わず、それでいて本質をシンプルに伝えるためにはどうすればいいのか考えることが大切ですが、子どもであれば普段見ているアニメに例えて説明するなど、別のもので例えることで理解もしてもらいやすくなります。
このように、別の何かに例えられないか意識するだけで、アナロジー思考は身についてきます。普段からできることなので、意識して取り組んでみてください。
アナロジー思考を身に付ける際に意識したい「構造の把握」と「構造の借用」
アナロジー思考を実践で活かすためには、「構想を把握すること」と「構造を借りる」の2つを意識することが大切です。
構造の把握
アナロジー思考で類似点を見つける際、表面的な類似か、構造的な類似のどちらを見抜くことが大切でしょうか。答えは構造的な類似を見抜くことです。
表面的な類似は、同じ領域や隣り合う領域でしか見つけることができず、パッと見ただけで見抜くことができます。つまり、表面的な類似点を見つけたとしても、その先で特に新しい発見もないのです。
一方で構造的な類似は、近い領域のものではなく、遠く離れた領域でも類似点を見つけることができます。表面的な類似に比べて発見がしにくく、難易度が高い特徴がありますが、見つけられればその領域の空白を推測できるため、新しい発見や今までになかった発明などにつながるのです。
そのため、アナロジー思考で大切になるのは構造的な類似に目を向けることです。実践する際には意識して取り組むようにしましょう。
構造の借用
前段落でお伝えした通り、アナロジー思考では新しいアイデアを発見するために、構造を把握することが大切です。その上で、把握した構造を借用することが求められます。そうすることによって、普段では簡単に気づかないような思わぬアイデアを見つけることができます。
先ほど紹介した表面的な類似点では、近くから借りてくることになるため、意味がありません。構造的な類似点を見つけ、遠くからのアイデアを借りてくることで革新的な発明や、新しいひらめきなどにつながるのです。
例えば、ホテル業界で新しいサービスを考えるときに、同業である別のホテルのアイデアをそっくりそのまま借りても訴えられる可能性があります。これが表面的な類似点です。
しかし、構造的に似ている遠くの他業界に目を向けることで、「今までホテル業界にはなかった画期的なアイデア」が生まれるのです。
アナロジー思考は構造的な類似点を借りてくることで、より精度の高い発見につなげられます。実践する際には、構造的な類似点を遠くから借りることも意識して考えるようにしましょう。
まとめ
アナロジー思考は、2つ以上の事柄に潜む本質的な構造を見抜き、それを別の分野へと応用する能力です。
身につけることで新しい発想ができたり、複雑な問題が発生しても解決できる力が身についたり、人への説明もわかりやすくできたりとさまざまなメリットがあります。
アナロジー思考を身につけるためには、さまざまなことを意識して日々の生活を送ることが大切ですが、日頃から視点を増やすように意識したり、抽象化したり、ダブルループ学習を取り入れたりすることで身につけることができます。
世の中には、何をやらせても完璧にこなす人や、未経験の問題に直面しても適切な仮説を立てることができる人など、優秀な人材が存在します。
これらの能力を持っている人は、アナロジー思考を身につけているケースが多いです。アナロジー思考は誰でも考え方を変えれば身につけられるスキルとなりますので、習得したい方は今日からトレーニングを実践してみてください。