仕事のモチベーションを引き出す!11のモチベーション理論とその活用法!

思考術・自己啓発
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私たちは日々「モチベーション」という言葉をよく使っていると思いますが、モチベーションをどうやって維持し、高めるかということは、仕事での成功に直結する重要なテーマです。

しかし、私たちの「モチベーション」とは具体的にどんなもので、どうやって上下するものなのでしょうか?

この記事では、モチベーションを形成するさまざまな理論を紹介し、それぞれが仕事や日常生活にどうやって落とし込むことができるのか、どうやって活かせば良いか11個のモチベーション理論を紹介していきます。

そもそも、モチベーション理論とは、人々がどのようにしてモチベーションを上げて、目標に向かって行動するようになるかを科学的に解明しようとする試みです。

モチベーション理論は、心理学、経営学、教育学など多様な分野にわたり、私たちの行動や成果を左右する根底にあるモチベーションのメカニズムを明らかにしようとしています。

自分自身だけでなく、チームメンバーがどんなことでモチベーションが上がるのか知りたい方にとって、11個のモチベーション理論を知ることは、チームのパフォーマンス向上のために役立つはずです。

ぜひ、ここで紹介する11個のモチベーション理論を知ってもらうことで、メンバーや自身のモチベーションを向上できるようになってください。

モチベーションの定義

モチベーションの理論を紹介していく前に、まずモチベーションの言葉の意味から紹介しましょう。

【モチベーション】

1 動機を与えること。動機づけ。

2 物事を行うにあたっての、意欲・やる気。または、動因・刺激。「—が上がらない」「高い—を維持する」

※引用元:goo国語辞書「モチベーション

「モチベーション」=「動機を与えること」ということですね。これは、やる気を出すための着火剤のようなものとイメージすると良いかもしれません。

そして、さらにモチベーションを理解する上では、外発モチベーションと内発モチベーションを知ることでイメージが付きやすくなるでしょう。

外発的モチベーションと内発的モチベーションの概要はそれぞれ下記のとおりです。

種類概要具体例
外発的モチベーション行動を促す動機が外部から来ること。
報酬や評価、罰など外部の刺激によって動く。
持続性が低い。
・仕事での昇進や給料アップ
・試験での良い成績
内発的モチベーション行動を促す動機が内部から来ること。
自己満足や興味、好奇心など自身の内面から動く。
やる気。持続性が高い。
・仕事への社会的意義を感じる
・憧れの人に近づきたい

例えば、スキルアップすれば、役職が上がるかもしれない、年収が上がるかもしれないということが外発的モチベーションであり、内発的モチベーションは、仕事に対してのやりがいを感じることなど、と表現できるでしょう。

では次の段落から、モチベーション理論についての紹介に入っていきましょう。

モチベーション理論の種類

ここでは、さまざまあるモチベーション理論の中でも、有名な11個のモチベーション理論を紹介していきます。

ただ、非常に文字量が多いため、各理論をどうやって活かせばいいのかポイントと総括を先に紹介し、その後それぞれの詳細を説明するという形で構成したいと思います。

モチベーション理論の総まとめ

理論名理論を活かすポイント
マズローの欲求5段階説メンバーごとに欲求の状況を把握することで、
それぞれに応じた個々のモチベーション向上に
向けてサポートしよう!
マクレランドの欲求理論達成欲求、権力欲求、親和欲求の3つの欲求がある。
メンバーごとにどの欲求を持っているか適切に判断し対応しよう!
自己決定理論自律性、有能感、関係性を育むことで、
内発的モチベーションを促進しよう!
目標設定理論明確かつ挑戦的な目標を設定し、
成果への道のりをサポートしよう!
フロー理論個々の能力と課題のマッチングを通じて
仕事への没入感を高めるサポートをしよう!
テイラーの科学的管理法効率的な作業プロセスと目標明確化で、
生産性向上を目指そう!
メイヨーのホーソン実験コミュニケーションの強化と認識される環境で
自尊感情と自己効力感を高めよう!
アージリスの未成熟・成熟理論メンバーの成長段階に応じたサポートと役割を
提供することで個人の発展を適切に促進しよう!
コンピテンシー理論コンピテンシーを設定することでメンバーの指針を作り、
モチベーションを管理しよう!
VIE理論期待、工具性、価値の3要素を重視して
モチベーションの強化を図ろう!

ビジネスの場でモチベーションを高めるためには、一人ひとりに対して行うことが大切です。

モチベーション理論から学べることは、メンバーの内発的な欲求や目標に合わせたサポートがモチベーション向上の鍵となるという点です。

また、職場の環境を整えることやメンバーの納得感のある目標設定、適切なフィードバックをすることも、メンバーのモチベーションを高めるために大切です。

これらを踏まえて、日々の業務において、個々のメンバーが自己効力感を感じ、仕事に対する意義を見出せるような環境作りを目指しましょう。

そうすることで、持続的なモチベーション向上と共に、組織全体の生産性も高まることでしょう。

それでは、下記からそれぞれの理論について紹介していきます。

マズローの欲求5段階説

背景

アブラハム・マズローが提唱した欲求5段階説は、自己実現心理学の重要な理論の一つとして位置づけられています。

ただ、一部、その根拠と一般化に関しては批判も受けています。彼の理論は、特定の自己実現者の事例に基づいて構築されたもので、これらの選択は主観的で偏っていたと指摘されています。

また、欲求の階層や順序を普遍的として捉えたことについては、文化や個人の違いを考慮しなかった点が批判されます。

ただし、マズローの欲求5段階説は、心理学の発展において、人間の可能性や成長を重視する新たな流れを作り、現代においても多様な文化や個人差を考慮した改良や発展が試みられています。

概要

マズローの欲求5段階説は、人間の欲求は下記のように構成されていて、順番に欲求が満たされていくことで自己実現に至るとしています。

マズローの欲求5段階説
  1. 生理的欲求:食事、睡眠、避難所など、生存に必要な最も基本的な要素。生理的欲求が満たされると身体的な健康や活力が得られる。
  2. 安全の欲求:物理的、経済的、法的、道徳的安全を含む。安全の欲求が満たされると不安や恐怖が減少する。
  3. 社会的欲求:愛情、友情、所属感など。社会的欲求が満たされると信頼や協力関係が増す。
  4. 尊厳の欲求:自尊心、自己評価、他者からの尊敬。尊厳の欲求が満たされると自信や自己効力感が高まる。
  5. 自己実現の欲求:自己の能力を最大限に発揮し、価値観や目的に沿った生き方をする欲求。自己実現の欲求が満たされると幸福感や充実感、創造性や貢献性が向上する。
仕事での活かし方

マズローの欲求5段階説の活用方法としては、メンバーのモチベーションの向上に活かすことができます。

例えば、メンバーの欲求の状態を把握することで、どんなアプローチを取るべきかが分かるため、適切なアプローチにつなげることができるはずです。

5つの欲求に当てはまる職場でのシチュエーションを当てはめてみたので、自身やメンバーの状況がマズローの欲求5段階説ではどこに該当するのか見つめ直してみてください。

欲求レベル職場でのシチュエーション例
職場で生理的欲求が満たされない長時間の残業や休憩の不足により、十分な睡眠や食事がとれない場合。
職場の環境が不衛生であり、水や空気の質が悪い場合。
職場の温度や湿度が適切でなく、暑すぎたり寒すぎたりする場合。
職場にトイレや給水機などの基本的な設備が不足している場合。
職場での事故や暴力により、身体的な怪我や痛みを負った場合。
職場で安全の欲求が満たされない職場に暴力やセクハラなどの問題があり、自分の身体や精神が危険にさらされていると感じる場合。
職場の経営が不安定で、いつリストラや倒産になるかわからないという不安がある場合。
職場のルールや方針が不明確で、自分の役割や責任がはっきりしない場合。
職場で社会的欲求が満たされない職場の人間関係が悪く、仲間意識やチームワークがない場合。
職場に馴染めず、孤立している場合。
職場の雰囲気が冷たく、コミュニケーションが取れない場合。
職場で尊厳の欲求が満たされない職場で自分の能力や貢献が評価されず、報酬や昇進の機会がない場合。
職場で自分の意見や提案が聞き入れられず、無視や否定される場合。
職場で自分の専門性や個性が認められず、他人と同じように扱われる場合。
職場で自己実現の欲求が満たされない職場で自分の持つ能力や才能を発揮できず、自分の可能性を制限されていると感じる場合。
職場で自分のやりたいことやなりたいことと、実際の仕事内容や役割が乖離している場合。
職場で自分の成果や貢献が見えにくく、自分の仕事に対する意義や価値を見出せない場合。

その他にも、マズローの欲求5段階説は下記のような形で仕事に活かすことができるでしょう。

ビジネスシーン活かし方
人事管理従業員の欲求の段階に応じて、
評価制度やキャリア開発の機会を提供し、
個々の成長と満足度を高めることができます。
組織開発従業員の欲求と組織の目標を一致させることで、
組織文化や風土の改善に効果を発揮します。
マーケティング顧客の欲求の段階に合わせた製品やサービスを提供することで、
顧客の満足度を高めることが可能です。
モチベーションの向上従業員の欲求に合わせた報酬や権限付与により、
より効果的な動機づけが行えます。

※出典

Maslow, A. H. (1943). A theory of human motivation. Psychological Review, 50(4), 370-396.

Maslow, A. H. (1954). Motivation and personality. Harper and Row.

Maslow, A. H. (1970). Motivation and personality (2nd ed.). Harper and Row.

マクレランドの欲求理論

背景

デイビッド・マクレランドによる欲求理論は、1961年に初めて発表されました。

この理論は、個人の動機づけに影響を与える主な欲求を特定し、それらが人間の行動や成果にどう影響するかを探求したものです。

この理論は、特にビジネスや教育分野での応用に影響を与えましたが、測定方法の客観性や欲求と行動の関係の複雑さに関しては批判も受けています。

1976年には、マクレランドは欲求理論に基づいてコンピテンシーを提唱しましたが、回避欲求については後に別の研究者が提案したもので、マクレランド自身が追加したものではありません。

概要

マクレランドの欲求理論とは、メンバーの行動には「達成欲求」「親和欲求」「権力欲求」のうち、いずれかの動機があるとする理論です。

欲求概要
達成欲求目標達成や課題克服に向けた成果を出すことへの欲求。
達成欲求が高い人は、中程度のリスクを好み、
具体的な目標に挑戦し、迅速なフィードバックを求めます。
権力欲求他人に影響を及ぼし、支配することへの欲求。
権力欲求が高い人は、リーダーシップを発揮し、
意思決定に関与することを望みます。
親和欲求他人との良好な人間関係や社会的なつながりを築くことへの欲求。
親和欲求が高い人は、
協力やチームワークを重視し、人間関係の調和を求めます。
仕事での活かし方

マクレランドの欲求理論を職場で活用するときには、それぞれが持っている欲求に応じた職種を選んだり、コミュニケーションの取り方に活かすことができます。

例えば、達成欲求が高い人は、具体的な目標達成に向けて自らアクションを起こしていけるタイプなので、営業職や研究職への適正を持っていると言えます。

また、達成欲求の高い人には、具体的な定量目標を立ててあげると、モチベーションアップにつながり、自律的に仕事をこなしてくれるでしょう。

権力欲求が高い人は、リーダーシップを発揮したり、チーム内での意思決定に関わりたいタイプなので、マネジメント職への適性を持っていると言えます。

ただ、権力欲求が高いと、他者の意見を無視したり、自分の利益のための行動を取ってしまう危険性があります。そのため、権力欲求が高い人はうまくコントロールする必要があります。

親和欲求が高い人は、人間関係をうまく築くことができ、良いチームワークを生み出してくれるタイプです。

そのため、カスタマーと直接やり取りを行うサービス職や介護士や看護師などに適性があると言えます。

3つの欲求に分けていますが、各メンバーはどんな欲求を持っているかを知ることで、自身に合った役割を知ることができますし、マネジメント層目線では、メンバーのマネジメントに役立てることができるでしょう。

※出典

McClelland, D. C. (1976). The Achieving Society. Irvington Publishers.

McClelland, D. C. (1987). Human Motivation. Cambridge University Press.

McClelland, D. C., & Burnham, D. H. (1976). Power is the great motivator. Harvard Business Review, 54(2), 100-110.

自己決定理論

背景

自己決定理論は、エドワード・デシとリチャード・ライアンによって1970年代後半に提唱されました。

この理論は、内発的動機づけと外発的動機づけの間に存在する自律性の程度に関する複数の段階に焦点を当てています。

外的要因が内発的動機づけに与える影響についても、認知的評価理論や有機的統合理論などの下位理論を通じて探求しています。

自己決定理論は、教育、ビジネス、健康管理などさまざまな分野で応用されており、人間の行動と動機付けの理解に重要な枠組みを提供しています。

概要

自己決定理論では、モチベーションを以下の3つの基本的なニーズに関連付けています。

欲求概要
自律性(Autonomy)自分の行動を自己決定し、制御する欲求。
有能感(Competence)自分の能力を効果的に活用し、達成感を感じる欲求。
関係性(Relatedness)他者との関連性や所属感を持つ欲求。

これらのニーズが満たされると、メンバーはより内発的にモチベーションが高まり、充実感や幸福感を感じやすくなります。

自己決定理論における下位理論では、外的要因がこれらのニーズに与える影響についても考察されています。

仕事での活かし方

部下やクライアントのモチベーションを高めることが求められるビジネス環境においては、自己決定理論は特にマネジメント層に役立つ理論です。

自律性、有能感、関係性という3つの基本的なニーズを満たすためには、メンバーに選択の自由と責任を与え、彼らの能力を活かし、成長できる機会を提供することが重要です。

そして、チーム内の協力関係や所属感を促進することで、メンバーの欲求を満たすことができるので、その結果、職場の生産性と満足度を高めることにつながります。

※出典

Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic motivation and self-determination in human behavior. New York: Plenum1

Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The “what” and “why” of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological Inquiry, 11, 227-2682

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55, 68-783

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2017). Self-determination theory: Basic psychological needs in motivation, development, and wellness. New York: Guilford Publishing4

目標設定理論

背景

目標設定理論は、心理学者エドウィン・ロックによって1960年に提唱されました。

この理論は、個人や組織のパフォーマンス向上における目標の重要性を強調しており、具体的で挑戦的な目標を設定することで、モチベーションを保ち、高いパフォーマンスを引き出すと主張しています。

概要

目標設定理論では、目標の難易度と具体性がモチベーションの維持やパフォーマンスに重要な影響を与えるとされています。

要素概要
目標の難易度適度に困難な目標がモチベーションを高め、
より良い成果をもたらします。
目標の具体性明確で測定可能な目標が、
パフォーマンスを向上させます。

また、目標達成の過程でのフィードバックの重要性が強調されていて、目標の進捗状況の定期的な評価や必要に応じて目標を調整することが推奨されています。

仕事での活かし方

目標設定理論においては、当事者が目標設定に参加することと、当事者が納得するかが重要です。

メンバーが目標設定に関与することで、目標に対する責任感や納得感を高めることにつながります。

そして、メンバーが目標を達成するために必要なリソースやサポートを受けられると感じることがより効果的です。

これにより、メンバーは目標に対してのコミットメントを持ち、高いモチベーションと共に目標達成に向けて取り組むことが期待できます。

その結果、職場におけるメンバーおよびチームのパフォーマンスと満足度を向上させる効果がありますので、マネジメント層はメンバーの目標を設定するときは、メンバーと一緒に納得のいく目標設定をしましょう。

メンバー自身も、目標を設定してもらうだけの受け身の姿勢ではなく、自ら自身の目標への責任感や自主性を持つことで、モチベーションを高く維持することができるでしょう。

※出典

Locke, E. A. (1968). Toward a theory of task motivation and incentives. Organizational Behavior and Human Performance, 3(2), 157-1891

Locke, E. A., & Latham, G. P. (1990). A theory of goal setting and task performance. Prentice-Hall2

Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American Psychologist, 57(9), 705-7173

フロー理論

背景

フロー理論は、心理学者ミハイ・チクセントミハイによって1970年代に提唱されました。この理論の背景には、東洋の精神的な伝統や芸道で見られるフローに近い概念が存在しています。

チクセントミハイは「禅と創造性」という本を共著したり、日本の能楽師や書道家などとの対話を行ったりするなど、これらの文化や実践から影響を受け、完全に活動に没頭し、高い集中力と満足感を得る状態「フロー」の経験を探求しました。

フロー理論は教育、ビジネス、スポーツ、芸術など多岐にわたる分野で影響を与えています。

概要

フロー状態に到達するための要因は複数あり、以下の点が特に重要とされています。

要因概要
活動と能力の適合挑戦と個人のスキルが適切にマッチすること。
明確な目標活動に関連する明確な目標とフィードバック。
集中と没頭活動に深く集中し、周囲のことから気を逸らさない状態。
自己の存在の忘却時間や自己を忘れ、活動に喜びや満足を感じる。

これらの要因は、チクセントミハイの著作や研究に基づいており、文献によってはさらに細かく分類されることもあります。

仕事での活かし方

フロー理論を職場で活かすためには、フロー状態に入りやすい環境を作ることが重要ですが、それだけでは不十分です。

メンバー自身が、自分の能力や目標に関する自己認識を高め、自分の仕事に意味や価値を見出す必要があります。

マネジメント層が、メンバーに適切な挑戦を提供するためには、個人のスキルや成長の可能性を評価し、適度な難易度のタスクを割り当てることが必要です。

そして、明確な目標を設定し、定期的にフィードバックするためにも、メンバーとのコミュニケーションを密に取ることが必要です。

従業員が集中して作業できるような環境を整えるという点では、リモートワークかオフィス勤務をメンバーごとに選択させたり、フレックスタイム制を取り入れるなど対応できるでしょう。

従業員の自己効力感を高めるためには、従業員の自主性や選択肢を尊重し、仕事に対するビジョンやミッションを共有することが必要です。

これらのアプローチを取り、メンバーがフロー状態に入ることで、仕事に集中し、高い生産性と満足感を得ることができるでしょう。

※出典

Csikszentmihalyi, M. (1975). Beyond boredom and anxiety. San Francisco: Jossey-Bass. 2: Csikszentmihalyi, M. (1990). Flow: The psychology of optimal experience. New York: Harper and Row.

テイラーの科学的管理法

背景

テイラーの科学的管理法は、フレデリック・W・テイラーによって20世紀初頭に提唱されました。

この理論は、工業化の進展に伴う労働効率の最適化の必要性から生まれ、労働の科学的な分析と管理によって生産性を高めることを目的としています。

テイラーは、労働者の個々の能力や作業方法を科学的に分析し、最も効率的な作業手順を確立しました。これにより、労働生産性の向上を図りました。

概要

テイラーの科学的管理法の主な特徴は以下の通りです。

項目概要
作業の標準化作業手順を科学的に分析し、最も効率的な方法を標準化しました。
時間研究と動作研究作業に要する時間と動作を詳細に分析し、無駄を排除しました。
差別化された賃金制度生産性に基づいた賃金制度を導入し、高い生産性を奨励しました。
管理と労働の分離計画と実行の分離を行い、管理者は計画に、労働者は実行に専念しました。

このアプローチは、労働の効率化と生産性向上に大きな影響を与えましたが、労働者の創造性や自主性の抑制などの批判も受けました。

仕事での活かし方

現代の職場において、テイラーの科学的管理法を活かすためには、作業プロセスの効率化に焦点を当てることが重要です。

これには、作業手順を標準化することや作業工数を把握することで、無駄を削減し生産性を向上させることが含まれています。

そして、メンバーのパフォーマンスに基づいたインセンティブを設定することで、モチベーションの向上を図ることにもつながるでしょう。

ただし、メンバーの創造性や自主性を尊重することも忘れないようにしましょう。メンバー自身が自分の仕事に意味を見出し、参加意識を持てるような環境を整えることが必要です。

その意味で、作業を機械的に効率化できることを見つけていき、クリエイティブな仕事に向き合えるような環境を整えることがマネジメント層には求められます。

※出典

Taylor, F.W. (1911). The principles of scientific management. New York: Harper & Brothers.

メイヨーのホーソン実験

背景

ホーソン実験は、1924年から1932年にかけてアメリカのホーソン工場で行われた一連の研究で、エルトン・メイヨーが1927年から始まったリレー組み立て実験以降の3つの実験に関与しました。

この実験は、職場環境が労働者の生産性に及ぼす影響を調査し、労働の科学的分析における社会的要素の重要性を強調しました。

メイヨーの同僚であるロースターによって行われた初期のミュール実験は、この研究の前哨戦とされます。

概要

ホーソン実験では、照明の強さや休憩時間などの物理的条件を変更し、労働者の生産性がどのように変化するかを観察しました。

実験の結果、物理的条件の変更に関わらず、生産性が向上したことから、「ホーソン効果」という現象が発見されました。

これは、実験者とのコミュニケーションやフィードバックが労働者の自尊感情や自己効力感を高めた結果、生産性が向上したことを示唆しています。

仕事での活かし方

ホーソン実験から得られるノウハウとして、メンバーは注目され、評価されていると感じる環境を作ることが自尊感情や自己効力感を高めることにつながるということです。

そのため、メンバーとのコミュニケーションを大切にし、彼らが貢献していることを理解し、フィードバックすることで、彼らのモチベーションと生産性を高めることができるということです。

また、社会的なつながりやチームワークを促進し、協力的な職場環境を構築することも、メンバーの満足度と生産性向上に寄与します。

※出典

Roethlisberger, F. J., & Dickson, W. J. (1939). Management and the worker. Cambridge, MA: Harvard University Press.

Mayo, E. (1933). The human problems of an industrial civilization. New York: Macmillan.

Whitehead, T. N. (1938). The industrial worker: A statistical study of human relations in a group of manual workers. Cambridge, MA: Harvard University Press.

Homans, G. C. (1950). The human group. New York: Harcourt, Brace and Company.

アージリスの未成熟・成熟理論

背景

クリス・アージリスによって1960年代に開発された未成熟・成熟理論は、労働者の人格と組織内での役割の発展に焦点を当てた理論です。

アージリスは、個人が職場環境で経験するさまざまな成長段階と、その成長が組織の構造や文化にどのように影響するかを探求しました。

この理論は、労働者の個人的な成熟度と職場での役割の成熟度がどのように連動するかを理解するための枠組みを提供します。

概要

アージリスの未成熟・成熟理論では、以下のような特徴を持つ段階があります。

段階概要
未成熟な段階この段階では、個人は受動的、依存的、短期的な視点を持ち、
自分の仕事に関心や関与を持たない傾向があります。 
成熟な段階個人は自主的、独立的、長期的な視点を持ち、
自分の能力や責任に見合った変化や新しい挑戦を求めるようになります。

この理論は、個人が職場でどのように成長し、発展するか、そしてそのプロセスが組織の効率性や効果性にどのように影響するかを理解するのに役立ちます。

仕事での活かし方

マネジメント層が、アージリスの未成熟・成熟理論を職場で活用するためには、個々のメンバーの成長段階を理解し、それに応じたサポートを提供することが重要です。

未成熟な段階のメンバーには、さまざまな業務内容を依頼し、その範囲を広げていくことを通して、自分の仕事に関心や関与を持たせることが必要です。

その一方で、成熟した段階のメンバーには、より自立した役割と決定権を与え、彼らの能力を最大限に活かすことが必要です。

メンバーの成長段階を把握しておくことで、メンバーに依頼する業務内容を変えていくことがメンバーのモチベーションを維持すること、上げていくことにつながるでしょう。

※出典

Argyris, C. (1957). Personality and Organization. New York: Harper.

Argyris, C. (1962). Interpersonal Competence and Organizational Effectiveness. Homewood. IL: Dorsey Press and Richard D. Irwin.

Argyris, C. (1964). Integrating the Individual and the Organization. New York: John Wiley & Sons.

コンピテンシー理論

背景

コンピテンシー理論は、1970年代にハーバード大学の心理学者デイビッド・マクレランドによって人事管理と組織開発の分野で提唱され、組織内で高いパフォーマンスを発揮する人材に共通する特性や行動を探求しました。

概要

コンピテンシー理論は、高いパフォーマンスが期待できる人材に共通してみられる行動の特性だけでなく、その行動を支える思考や価値観などの潜在的な特性も含めたものとして「コンピテンシー」を定義しています。

これは、単なる技能や知識以上のものを含み、個人が特定の状況でどのように行動するか、またその背後にある動機や信念を反映しています。

仕事での活かし方

例えば、高いパフォーマンスが期待できる人材に共通してみられる行動の特性を1つの評価軸や目標として設定することで、メンバーが目指すべき姿をイメージしやすくなるでしょう。

チームで評価される姿が明確になれば、各メンバーもその姿を目指して進むことができるため、それぞれのモチベーションを向上させることにも役立ちます。

また、社内において評価される行動やスキル、知識を持っているメンバーからノウハウ共有会を開催することで、チーム全体のパフォーマンス向上だけでなく、評価されているメンバーが自己効力感を感じることでモチベーションを上げていくことにもつながるでしょう。

※出典

Weinert, F. E. (1999). Concepts of competence. OECD

McClelland, D. C. (1973). Testing for competence rather than for “intelligence”. American psychologist, 28(1), 12

Spencer, L. M., & Spencer, S. M. (1993). Competence at work: Models for superior performance. John Wiley & Sons3

Rychen, D. S., & Salganik, L. H. (Eds.). (2003). Key competencies for a successful life and a well-functioning society. Hogrefe Publishing

ハーズバーグの二要因理論

背景

フレデリック・ハーズバーグによって20世紀後半に提唱された二要因理論は、労働者の仕事に対する満足度と不満足度の要因を分析することを目的としています。

この理論は、職場のモチベーションと労働者の満足度に関する研究の中で発展しました。

ハーズバーグは、仕事の環境が労働者の態度に与える影響を深く探求し、労働者のモチベーションと生産性に関する新たな理解を提供しました。

概要

ハーズバーグの二要因理論では、仕事の満足度に影響を与える2つの主要な要因が識別されています。

要因概要
衛生要因(Hygiene factors)給与、職場環境、会社方針、福利厚生などの要因で、
これらが不十分だと不満足を引き起こしますが、
十分であっても必ずしも満足を生み出しません。
動機づけ要因(Motivator factors)仕事の成果、承認、責任、昇進などの要因で、
これらが存在すると仕事に対する満足が高まります。 

この理論は、仕事の満足度と不満足度が必ずしも同じ要因から生じるわけではなく、それぞれ異なる要因に由来するという点を明らかにしています。

仕事での活かし方

ハーズバーグの二要因理論からは、衛生要因を適切に管理し、メンバーの不満足を防ぎながらも、動機づけ要因を強化し、メンバーの仕事への満足度とモチベーションを高めることが大切だと学ぶことができます。

特に、動機付け要因を改善していかなければ、メンバーのモチベーションを上げることにつながらないという点は、見逃せないポイントです。

そのため、仕事の成果に対してしっかりと評価し、自己効力感を高めるようなアプローチがモチベーション向上には欠かせないということです。

※出典

Herzberg, F., Mausner, B., & Snyderman, B. B. (1959). The motivation to work. New York: John Wiley & Sons.

Herzberg, F. (1966). Work and the nature of man. Cleveland: World Publishing.

Herzberg, F. (1968). One more time: How do you motivate employees? Harvard Business Review, 46(1), 53-62.

Herzberg, F. (1976). The managerial choice: To be efficient and to be human. Homewood, IL: Dow Jones-Irwin.

VIE理論

背景

VIE理論は、1964年にビクター・H・ブルーム(Victor H. Vroom)によって提唱されました。

この理論は、個人が特定の行動を選択し、維持する理由と、その行動に対するモチベーションの強さを理解することを目的としています。

VIE理論は、特に組織行動や人事管理の分野で重要な影響を与えています。

概要

VIE理論の主要な構成要素は以下の通りです。

要素概要
期待(Expectancy)個人が自身の努力が特定のパフォーマンスに結びつくと信じる度合い。
工具性(Instrumentality)特定のパフォーマンスが報酬や結果に結びつくと信じる度合い。
価値(Valence)報酬や結果が個人にとってどの程度望ましいかを表す、個人の主観的な望ましさ。

モチベーションの強さは、期待、工具性、価値の積として計算され、すなわちモチベーションの強さ = 期待 × 工具性 × 価値という式で表されます。

仕事での活かし方

VIE理論を職場で活用するためには、メンバーが自身の努力が望ましい結果に結びつくと信じられるような環境を整えることが重要です。

期待(Expectancy)を高めるためには、メンバーが自身のスキルと業務内容がマッチしており、適切な目標設定をすることが求められます。

工具性(Instrumentality)を強化するためには、人事評価制度がメンバーのパフォーマンスと連動する形を確立し、公正かつ一貫性のある評価制度である必要があります。

そして、価値(Valence)を高めるためには、メンバーにとって望ましい給与や成果を設計し、彼らのニーズや目標に合わせる必要があります。

人事評価制度に関わってくるため、このVIE理論を実現するには一筋縄ではいきませんが、いずれにせよ、仕事に対して納得のいく報酬がもらえることがモチベーションの向上につながるということですね。

※出典

Vroom, V. H. (1964). Work and motivation. New York: Wiley. : Robbins, S. P., & Judge, T. A. (2017). Organizational behavior (17th ed.). Boston: Pearson.

全体のまとめ

この記事では、さまざまなモチベーション理論について、を紹介してきました。

いずれにしても、モチベーションを維持する、上げることは、仕事でのパフォーマンスに大きく影響してきます。

そのため、これだけ多くのモチベーション理論が提唱されているわけですが、いずれにしても、メンバーのことを深く理解し、適切なサポートを行い、自己効力感を感じてもらうことがモチベーションの向上につながるということです。

ぜひ、実際の職場でもこれらの理論を活かして、メンバーのモチベーションを上げるように意識していってください。