あなたは部下とのコミュニケーションに不安や悩みを抱えていませんか?コミュニケーションは、チームの生産性とチームメンバーのエンゲージメントを高める上でとても重要です。
しかし、多くの上司が直面するのが、そのコミュニケーションの方法やタイミング、特に「叱る必要がある時」の対応の仕方が分からないということです。
この記事では、部下とのコミュニケーションでの課題や円滑なコミュニケーションを図るためのヒント、そして時に避けることができない叱るべき状況における適切なコミュニケーションに焦点を当てて紹介します。
読み進めることで、職場での人間関係をより良いものへと導くための一助となれば幸いです。
多くの人が職場で感じているコミュニケーションの課題
チーム内でのコミュニケーションは、組織の生産性と社員の満足度を左右する重要な要素です。
しかし、多くの企業においては、上司と部下の間でさまざまなコミュニケーションの課題を持っており、これが仕事の生産性・効率性の低下やモチベーションの低下を招いています。それでは、部下と上司の間で感じられている具体的な課題をいくつか見てみましょう。
上司が感じる、部下とのコミュニケーション上の課題
では、さっそく上司が感じている部下とのコミュニケーションについていくつか紹介していきましょう。
- 部下の意見を聞きにくい
- 部下のモチベーションが上がらない
- 部下の成長を促す方法がわからない
- 部下の仕事の進捗状況が把握できていない
- 部下の能力を正しく評価できていない
- 部下の意見を取り入れる方法がわからない
※参考: 「上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査」 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ここで取り上げた課題をあなたも感じていませんか?
世の中のマネジメント層が直面しているのは、部下との有意義なコミュニケーションをいかに構築するかという点です。部下からの意見を引き出すことの難しさ、彼らのモチベーションを如何にして高めるか、また、部下の成長を促すための効果的なアプローチをどう見つけるかは、上司にとっての大きな課題になっています。
加えて、部下の日々の仕事の進捗状況を把握することや、彼らの能力を正しく評価し、フィードバックを提供することも業務に追われている中では、全てやりきることは容易ではありません。
部下が感じている、上司とのコミュニケーション上の課題
続いて、部下が感じている上司とのコミュニケーションで感じている課題についていくつか紹介していきましょう。部下が感じていることに気付けていない人もいるかもしれませんので参考になるはずです。
- 指示やフィードバックが不十分である
- 評価基準が明確でない
- 意見を言いにくい雰囲気がある
- 上司の意向が伝わりにくい
- 上司が忙しそうで相談しにくい
- 上司が部下の立場に立って考えてくれない
- 上司が部下の意見を聞いてくれない
- 上司が部下の成長を促してくれない
※参考: 「上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査」 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
部下が求めていることを見てドキッとした人もいるかもしれません。
部下は上司からの指示やフィードバックが不十分であると感じることが多く、その結果、自分の仕事に対する評価基準が曖昧であったり、何を求められているのか理解しにくいという状況に陥りやすいようです。
また、上司に意見を言いにくい雰囲気や、上司の意向が伝わりにくいことが、部下の不安やストレスの原因となっています。上司が常に忙しそうにしていると、相談しにくい環境にもなってしまいます。
さらには、結果的に上司は部下の立場に立った考えや意見を受け入れてくれないと感じることで、部下の成長やキャリアアップにつながらないという課題が生まれていきます。
これは、上司にとっても、部下にとっても望ましくない状況ですね。
部下とのコミュニケーションを円滑にしていくためのヒント
部下とのコミュニケーションは、チームのパフォーマンスと職場の雰囲気に直接的な影響を及ぼしてしまいます。そのため、効果的なコミュニケーションを確立することは管理職・マネージャー層にとって必要不可欠です。ここでは、部下との間で起きてしまっているコミュニケーション上の課題を改善するためのいくつかのヒントを紹介します。
部下の立場・目線に立つ
自分自身の業務に忙しく、そこまでの心の余裕がないかもしれません。しかし、それでも部下の立場に立って物事を考えることで、彼らのニーズや仕事上の懸念点をキャッチアップしやすくなります。
そのため、部下の立場・目線に立つこのアプローチは、部下が直面する日常的な課題やプレッシャーに共感できるため、コミュニケーション上での改善が見込めるでしょう。
定期的な面談(1on1)を実施する
1on1の面談は、部下と個別にコミュニケーションを取る絶好の機会です。個別で話すことができるため、部下は自身の意見や懸念を上司に伝えることができるため、心理的なプレッシャーを軽減することにつながるでしょう。
また、上司は部下の進捗を確認できるので、ダイレクトに部下の進捗に関してフィードバックできます。
オープンなコミュニケーションを心がける
オープンなコミュニケーションを心がけることで、部下は自分たちの意見が聞かれ、信頼されていると感じやすくなるはずです。これは、自身が自身の上司からもオープンに接してくれた時の感情を思い出せば理解できると思います。
自身が上司にやってもらいたい環境を自身で作ることを心掛けましょう。
部下一人ひとりの個性や価値観を尊重する
部下一人ひとりが持つ独自の個性や価値観を理解し尊重することは、多様性が豊かな職場環境を構築する上で重要です。尊重してくれる環境があると部下が感じれば、自然と部下からの意見が活発に発信され、より満足感の高い職場に変わっていくでしょう。
部下の意見をもらう
部下の意見を積極的に求めることは、彼らがチームメンバーとして自己効力感を感じさせ、チームに貢献できていると感じるようになるでしょう。これは上司自身の成長にもつながり、例えば、チーム運営の管理・運営方法の改善につながっていきます。
部下を叱る時に気を付けたい注意事項
叱り方が分からない、叱ることが苦手という人が一番気になることでしょう。
ここでは、部下を叱る必要がある時に気を付けたい注意事項を紹介していきます。
部下を叱るという行為は、組織内の人間関係やチームのモチベーションに大きく影響を与えるため、慎重に行う必要があります。叱ることは必ずしも否定的な意味だけでなく、適切に行えば部下の成長や改善につながりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「叱る」ことが苦手な上司は多い
多くの上司が「叱る」という行為に苦手意識を持っています。それは、叱ることで部下との関係悪化やパワハラとなってしまうのではないかという不安、どのように叱れば建設的な影響を与えられるのか分からないなど不安が多いためです。
しかし、「叱る」という行為自体を避けてしまうと、部下の行動に対する明確なフィードバックが提供されず、結果として同じ問題が繰り返される可能性があります。
そして、更にはチームとして目指す目標が達成されず、チームの必要性さえも危うくなってしまいます。
そのため、叱ることは絶対に必要なことですので、マネージャー職として断固叱る時は叱りましょう。ただ、叱る際は、感情的にならずに、具体的な事実に基づいて冷静に行動することが大切です。
そして、叱る理由を明確にし、部下の自己肯定感を損なわないように配慮が必要です。叱ることの目的は、部下を罰することではなく、彼らの成長と改善を促すことという認識を持ちましょう。では、早速紹介していきます。
叱る前に、状況を正確に把握する
悪い例「最近のあなたの成績は全然ダメだね。いったい何をしているんだ?」
改善例「今月起きているプロジェクトの遅延について、具体的な状況を教えてもらえるかな?」
叱る際には、事実を正確に把握していることが重要です。悪い例では、具体的な事実に基づかず、一方的に非難しており、部下はかなり追いつめられる感覚に陥るでしょう。
改善例では、具体的な問題(プロジェクトの遅延)を指摘し、部下に状況説明の機会を与えています。そのため、まずは起きている状況をしっかりと確認しましょう。
叱る理由を明確にする
悪い例「いつもいつもミスが多いよね。もっとしっかりしなさい。」
改善例「今週のレポートには3箇所の計算ミスがありました。そのため、分析結果に影響が出ているのですが、どうして計算ミスが発生したのでしょう?」
明確に叱る理由を伝えることで、部下は自分がなぜ叱られているのかを理解し、将来的に同じミスを繰り返さないように意識するようになります。改善例では、具体的なミスとその影響を示し、会話を通じて原因を探る姿勢を示しています。
部下の立場に立って考える
悪い例「この小さなミスも見逃せないの?」
改善例「このミスが起きた背景には、何かいつもと違う状況があったのかな?」
部下の立場に立って考えることで、彼らの状況や感情を理解し、適切な対応を取ることができるでしょう。改善例では、ミスが起きてしまった背景を理解しようとする姿勢が示されています。
感情的にならず、冷静に叱る
悪い例「また同じミスか!いい加減にしてくれ!」
改善例「同じミスが再発しているね。これにはどんな理由があるのか、冷静に話し合おう。」
感情的な叱責は部下の士気を下げるだけでなく、問題解決にもつながりません。冷静なアプローチは、問題を解決する建設的なステップへと進むために重要です。
部下の言い分を聞く
悪い例「言い訳は聞きたくない。」
改善例「何が起きたのか、君の視点からも話してほしい。」
部下の言い分を聞くことで、問題の全容を把握しやすくなり、部下も自分の意見が尊重されていると感じるでしょう。一方的になっては事実を見誤る可能性があります。
今後の改善策について話し合う
悪い例「次からはもう少し気をつけなさい。」
改善例「今後のために具体的にどう改善していくか、一緒にプランを立てていこう。」
部下自身が改善策に関わることで、責任感を持って取り組むことが期待できます。メンバー目線で改善策を考えることで、メンバーにとって無理のない改善策が立てられるはずです。
部下を信じてサポートする
悪い例「君にはこれが限界なのかもしれない。」
改善例「今回のミスを乗り越え、より成長していけると信じているよ。どうサポートしてほしい?」
上司からあきらめられた部下は、それ以上成長しません。期待を持たれないことは、とてもつらいことですので、上司である以上部下をあきらめることのないようにしましょう。
部下に信頼とサポートの意志を示すことで、彼らは自信を持って次に進むことができます。
部下のプライドを傷つけない
悪い例「君のせいでチーム全体の評判が下がった。」
改善例「起きたミスはしょうがないので、どうやって挽回すればいいかチームで一緒に考えよう。」
部下のプライドを守りながら、チームとしての責任感を促しましょう。仕事は1人では完結できないことを認識し、伝えることでチームメンバーとしての責任感を持つような行動に変わっていくでしょう。
何度も繰り返し叱らない
悪い例「前にも同じことで叱ったよね?いつになったら学ぶの?」
改善例「前に話したポイントがまだ改善されていないようだね。再発防止のためにやれることをもう一度考えよう」
過去のミスを繰り返し指摘するのではなく、再発防止に向けての対策を促すことで、建設的にコミュニケーションを図りましょう。
叱る場所と時間を配慮する
悪い例「会議の最中にみんなの前で叱る」
改善例「周りに人が少ない空間を選び、適切なタイミングで落ち着いて話をする」
叱る場所や時間に配慮することで、部下のプライドを傷つけないように配慮し、問題の解決に集中できる場所で話し合うようにしましょう。
この段落のまとめ
部下を叱る際に気を付けたいポイントを紹介してきました。今まで実際に試したこともあるかもしれませんが、意識していなかったこともあるのではないでしょうか。
部下とのコミュニケーションは仕事を進める上で絶対的に避けては通れませんので、もしこれまで意識したことが無いポイントがあった時には、ぜひ試してみてください。
部下とのコミュニケーションに悩んでいる方におすすめの書籍
ここまでは、部下とのコミュニケーションで気を付けたいポイントを紹介してきましたが、最後に更にコミュニケーション能力を高めたいと考えている人向けにいくつか書籍を紹介します。
気になる書籍があった際にはぜひ読んで参考にしてみてください。
『伝え方が9割』(佐々木 圭一著)
『伝え方が9割』は佐々木 圭一氏の著書です。この本は、同じ内容でも伝え方次第でノーをイエスに変えるテクニックや手法が紹介されています。誰もがすぐに参考にすることができる内容が多いので、コミュニケーション能力をサクッとテクニックで改善したいと考えている人には丁度良い本になっています。
『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(伊藤 羊一著)
『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』は伊藤 羊一氏の著書であり、「なぜ1分で話さないといけないのか」「1分で話す方法」がまとめられています。内容もすっきりと読みやすい本になっています。
著者の伊藤氏は、そのプレゼンを聞いたソフトバンクの孫社長から認められるほどの技術の持ち主であり、今はグロービスの講師として、Zアカデミアの学長として、起業家からビジネスパーソンまで年間300人以上のプレゼンを指導し、ピッチコンテストなどでの優勝者を続々と輩出しています。
『超一流の雑談力』(安田 正著)
『超一流の雑談力』は安田 正氏の著書であり、コミュニケーション能力を向上する上で必要な情報収集方法、話し方、聞き方が分かる本となっています。部下との会話をするときにも参考にできるのではないでしょうか。
『神トーーク 「伝え方しだい」で人生は思い通り』(星 渉著)
『神トーーク 「伝え方しだい」で人生は思い通り』は星 渉氏の著書であり、すぐに役立つテクニックを紹介するというより、コミュニケーションの本質についてを心理学に基づいて書かれた本です。
『人は話し方が9割』(永松 茂久著)
『人は話し方が9割』は永松 茂久氏の著書です。話し方のテクニックを知りたい方には非常に役立つ内容となっています。書いてあることが読みやすく、実践しやすいという評価が多く、話し方・伝え方に課題を感じている人がサクッと読みたい時に特におすすめの本です。
全体のまとめ
上司と部下という関係上、なかなかフラットなコミュニケーションを図ることは難しいかもしれません。特に叱る時には上司としても不安なことは多いでしょう。
この記事で紹介したような叱る時のポイントを参考にしながら、部下と良いコミュニケーションを図り、より良いチームを作っていただければ幸いです。