私たちは、言葉だけでなく、表情やしぐさ、声のトーンなど、言語以外のコミュニケーションも駆使して、相手と意思疎通を図っています。このような言語以外のコミュニケーションを、ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)といいます。
この記事では、ノンバーバルコミュニケーションの概要や役割、取り入れ方について解説します。参考にしていただくことで、コミュニケーションを円滑に進めることができるはずです。
ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)の概要
ノンバーバルコミュニケーションとは、言葉以外で行うコミュニケーションのことです。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 表情
- 視線
- 身振り手振り
- 姿勢
- 身体接触
- 対人距離
- 声のトーン、速度、アクセント
- 間の置き方
- 外観・身だしなみ
- 匂い
ノンバーバルコミュニケーションは、言語コミュニケーションを補完する役割を果たします。例えば、言葉では「嬉しい」と伝えているのに、表情が暗いと、相手は「本当は嬉しくないのかな?」と疑ってしまいます。
このように、ノンバーバルコミュニケーションが適切でないと、相手に誤解を与えてしまう可能性があります。
メラビアンの法則でわかるノンバーバルコミュニケーションの重要性
ノンバーバルコミュニケーションの重要性を示すものとして、メラビアンの法則があります。
これは、米国の心理学者であるアルバート・メラビアンが1971年に提唱した法則で、人の印象を決める際に、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合で影響を与えるとされています。
この法則からわかるように、ノンバーバルコミュニケーションは、言葉よりも大きな影響力を持つと言えます。そのため、ビジネスや日常生活において、ノンバーバルコミュニケーションを意識することが大切です。
ノンバーバルコミュニケーションの具体例
ここでは、ノンバーバルコミュニケーションの具体例について見ていきましょう。ノンバーバルコミュニケーションは、大きく分けて以下の5つのカテゴリに分けることができます。
- 身体動作
- 身体接触
- 対人距離・パーソナルスペース
- 周辺言語(パラランゲージ)
- 身体的特徴
身体動作
要素 | 概要 |
---|---|
表情 | 喜怒哀楽などの感情を表現するために使われるものです。 |
視線 | 相手の注意を引いたり、コミュニケーションの意思表示をしたりするために使われます。 |
身振り・手振り | 言葉を補完したり、感情を表現したりするために使われます。 |
姿勢 | 自信や余裕など、相手の印象を左右するものです。 |
身体接触
要素 | 概要 |
---|---|
ハグ | 相手への親愛や感謝の気持ちを表現するために使われます。 |
握手 | ビジネスシーンでよく用いられる、挨拶やお礼などの表現です。 |
肩をたたく | 相手を励ましたり、気分を盛り上げたりするために使われます。 |
対人距離・パーソナルスペース
要素 | 概要 |
---|---|
対人距離 | 相手との距離感のことです。文化や状況によって異なります。 |
パーソナルスペース | 自分が心地よく感じる距離感のことです。個人によって異なります。 |
周辺言語(パラランゲージ)
要素 | 概要 |
---|---|
声のトーン | 感情を表現するために使われます。 |
速度 | 自信や余裕など、相手の印象を左右します。 |
アクセント | 出身地や育った環境を示すものです。 |
間の置き方 | 話の流れを整えたり、相手に考えさせるために使われます。 |
身体的特徴
要素 | 概要 |
---|---|
外観・身だしなみ | 第一印象を左右するものです。 |
匂い | 相手に好印象を与えたり、不快感を与えたりします。 |
ここまでのまとめ
ここではノンバーバルコミュニケーションの具体例について解説しました。この中で、自身が意識していなかったノンバーバルコミュニケーションはありましたか?
話す際も聴く際も、改めて意識してみることで、より深く自身や相手の気持ちや考えを正しく伝え、理解することができるでしょう。
ノンバーバルコミュニケーションが果たす役割
ここでは、ノンバーバルコミュニケーションが果たす役割について見ていきましょう。
期待できる効果について
ノンバーバルコミュニケーションには、以下の4つの期待できる効果があります。
言語情報で伝えきれない心情を補完してくれる
言葉では伝えきれない、喜怒哀楽などの感情を表現することができます。
例えば、相手を褒めるときに、ただ「素晴らしいですね」と言うだけでは、相手は素直に受け取れないかもしれません。しかし、笑顔で「素晴らしいですね!」と言うことで、相手はより喜びを感じることができます。
相手の心情や本音に気づきやすくなる
相手の表情や身振り手振りから、相手の心情や本音を読み取ることができます。
例えば、相手の表情が曇った時には、言葉では言えない何か不安を抱えている可能性があります。そのようなときは、相手を気遣う言葉をかけてあげたり、安心させてあげたりするとよいでしょう。
相手との信頼関係を構築しやすくなる
相手の気持ちを理解し、共感することで、相手との信頼関係を構築しやすくなります。
例えば、相手が話をしているときに、うなずきながら聞くことで、相手は「自分の話を聞いてくれている」と感じ、信頼感を抱きやすくなります。
相手を説得しやすくなる
相手に共感することで、相手を説得しやすくなります。
例えば、相手の意見を否定せずに、まずは相手の立場に立って考えてみましょう。相手の気持ちに寄り添った上で、自分の意見を述べることで、相手を説得しやすくなります。
ノンバーバルコミュニケーションがビジネスで役立つ場面と使い方例
ノンバーバルコミュニケーションは、ビジネスシーンにおいてもさまざまな場面で役立ちます。
例えば、以下のような場面で活用できます。
- プレゼンテーションや会議
- 取引先や顧客との商談
- 研修やワークショップ
- 転職活動中などでの面接
ノンバーバルコミュニケーションは、使う場面や使い方によって効果が変わります。以下に、ノンバーバルコミュニケーションの良い活用例と悪い活用例をご紹介します。
プレゼンテーションや会議
プレゼンテーションや会議では、ノンバーバルコミュニケーションが活きるかっこうの場です。
表情や身振り、声のトーンや間、目線の使い方を上手く扱うことで、スティーブ・ジョブズのように、人を惹きつけ、話の説得力を持たせてくれるでしょう。
プレゼンテーションや会議の場での良い活用事例、悪い事例を具体的に紹介します。
【良い活用例】
- 相手の目を見て話す
- 身振り手振りを交えて話す
- 声のトーンを抑揚よく話す
【悪い活用例】
- 相手の目を見ずに話す
- 身振り手振りが激しい
- 声のトーンが単調
取引先や顧客との商談
商談においても、ノンバーバルコミュニケーションを活かすことができます。
特に、商談においては、相手に信頼感や安心感を抱かせる必要があるので、言葉での説明だけでなく、相手への共感する姿勢、目を見て笑顔で対応するなどの態度や表情が大切です。
【良い活用例】
- 笑顔で話す
- 相手の話をうなずきながら聞く
- 適度にアイコンタクトをとる
【悪い活用例】
- 無表情で話す
- 相手の話を遮って話す
- アイコンタクトを避ける
研修やワークショップ
研修やワークショップでの教育では、講師側の非言語的な振る舞いが、参加者が学びを深めるための環境作りにとても役立ちます。
参加者全員の目を見つつ、全体を見渡しながら抑揚をつけて話すことで、オープンで前向きな印象を抱かせることにつながります。
そうすることで、参加者が前向きに研修やワークショップに参加でき、結果、良い学びの機会になっていきます。
【良い活用例】
- 参加者の目を見て話す
- 身振り手振りを交えて話す
- 声のトーンを抑揚よく話す
【悪い活用例】
- 参加者の目を見ずに話す
- 身振り手振りが激しい
- 声のトーンが単調
転職活動中などでの面接
転職活動中の面接でも、ノンバーバルコミュニケーションが役に立ってくれます。
面接の場では、面接官への回答以外にも、人となりを判断することになります。
そのため、会話の内容だけでなく、実際に一緒に働くときに、お互いが気持ちよく話せるかどうかなどもポイントになるため、ノンバーバルコミュニケーションの要素となる、笑顔や身振り手振り、声のトーンなどを意識することで、良い面接結果につながります。
【良い活用例】
- 笑顔で話す
- 相手の話をうなずきながら聞く
- 適度にアイコンタクトをとる
【悪い活用例】
- 無表情で話す
- 相手の話を遮って話す
- アイコンタクトを避ける
ここまでのまとめ
場面に合わせたノンバーバルコミュニケーションの使い方を例と共に紹介しました。ここで紹介した例はあくまで一例ですが、コミュニケーションをスムーズに行うために参考にしてみてください。
ノンバーバルコミュニケーションはどう取り入れれば良い?
ここではノンバーバルコミュニケーションを効果的に活用するための取り入れ方を細かく見ていきましょう。
ノンバーバルコミュニケーションは、普段の生活の中で無意識に行っていることが多いものです。すぐにでも見直せるポイントを3つ紹介し、その上で、気を付けるべきことをお伝えします。
まずは自分のノンバーバルコミュニケーションの癖を把握することが大切です。
鏡を見ながら話したり、録音を聞いてみたりして、自分の表情やしぐさがどのような印象を与えるのかをチェックしましょう。また、心の動きが身体にどう影響するかを認識することで、より効果的なノンバーバルコミュニケーションを身につけることができます。
そして、言葉以外のコミュニケーションが不可欠であることを意識しましょう。ノンバーバルコミュニケーションを意識的に活用することで、相手とのコミュニケーションをより円滑に進めることができます。
自身が話す時に気を付けること
自身が話すときには、以下のことに気を付けましょう。
相手の目を見て話す
相手の目を見て話すことで、相手に興味や関心を持っていることが伝わります。また、相手の表情やしぐさから、相手の反応を読み取ることもできます。
相手の名前を覚えて呼んであげる
相手の名前を覚えて呼んであげることで、相手に親しみや信頼感を与えることができるはずです。
表情やしぐさに感情をのせる
話す内容に合わせて、表情やしぐさに感情をのせることで、相手に伝えたいことがより伝わりやすくなります。
声のトーンやリズムを感情に合わせて話す
声のトーンやリズムを感情に合わせて話すことで、話にメリハリが生まれ、相手に興味を持ってもらうことができます。
相手のペースに合わせて話す
相手のペースに合わせて話すことで、相手に話を聴いてもらいやすい環境を作ることができます。
相手の話を聴く時に気を付けること
相手の話を聴くときには、以下の3つに気を付けましょう。
相手の話を聞くときは顔を見るように心掛ける
相手の話を聞くときは、相手の顔を見るように心掛けましょう。相手の表情やしぐさを見ることで言葉以上の熱量を感じ取ることができるはずです。
相手の話をうなずきながら聞く
相手の話をうなずきながら聞くことで、相手に「話を聞いています」という意思表示をすることができます。
表情やしぐさで感情を読み取るように意識する
相手の表情やしぐさから、相手の感情を読み取るように意識しましょう。相手の気持ちを理解することで、より良いコミュニケーションを図ることができます。
ここで紹介したノンバーバルコミュニケーションの取り入れ方を参考に、自分のノンバーバルコミュニケーションを振り返ってみましょう。
また、相手とのコミュニケーションにおいて、ノンバーバルコミュニケーションに注目してみると、より深く相手の気持ちや考えを理解することができるかもしれません。
全体のまとめ
この記事では、ノンバーバルコミュニケーションは、言葉以上に相手の印象を左右する重要な要素だと紹介してきました。それはビジネスシーンや日常生活においても同じです。
より良いコミュニケーションを図っていくためにも、改めてノンバーバルコミュニケーションの効果を意識し、実践してみると良いでしょう。
今回紹介したノンバーバルコミュニケーションの概要や役割、取り入れ方などを参考に、ぜひ自分のノンバーバルコミュニケーションを磨いてみてください。