コンフォートゾーンは、心理的なストレスがなく、居心地の良い状態にいることを指す言葉の一つです。コンフォートゾーン内にいることは決して悪いことではありませんが、その状態が続くことで自分自身の成長の機会は失われてしまいます。
特にビジネスシーンで使われる言葉の一つとなっており、成長するためにもコンフォートゾーンから抜け出したいと考えている方も多いでしょう。
今回は、コンフォートゾーンの概要から留まり続けるデメリット、抜け出すための具体的な方法について紹介します。「停滞している状態から抜け出したい」「今よりもっと成長したい」と考えているビジネスパーソンは、ぜひ参考にしてみてください。
コンフォートゾーンとは?
コンフォートゾーンとは、自分にとってストレスのない居心地の良い環境にいることを指します。英語の「comfort」は、「快適」や「癒し」といった意味があり、「zone」は「領域」等の意味を持っています。
人はコンフォートゾーン内にいることで、ストレスや不安を回避できたり、自己肯定感を高められたりとさまざまなメリットがあります。
一見、良さそうな言葉に聞こえますが、留まり続けることで未知の領域に挑戦しようといった気持ちはなくなってしまうため、自分自身を成長させるという意味ではあまり良い言葉ではありません。
今よりも自分自身を成長させるためには、コンフォートゾーンから抜け出すことが大切であり、その先に新しい挑戦や経験を得る機会が待っています。
安全地帯で停滞し続けている人の中で、「もっと成長しないと…!」と思っているなら、コンフォートゾーンから抜け出すことを検討してみてください。
コンフォートゾーンに関連する2種類のゾーン
普段、生活をしていく上でコンフォートゾーン以外に関連する2つのゾーンが存在します。それが「ラーニングゾーン」と「パニックゾーン」です。
ラーニングゾーン
ラーニングゾーンとは、コンフォートゾーンを抜け出したすぐ外側にあるゾーンのことを言います。簡単に言えば「未知の領域」や「学びの領域」となり、今持っているビジネススキルや知識があまり通用しないゾーンです。
例えば今まで任されたことのない仕事に挑戦する機会や、今まで会ったことのない人と話すなどの場面では、ラーニングゾーンにいると言えるでしょう。
コンフォートゾーンに比べて精神状態が安定するような場所ではないため、適応するための努力が必要不可欠となります。ラーンングゾーンは、コンフォートゾーンを抜け出そうとしたとき、必ず通らなければならない道です。
パニックゾーン
コンフォートゾーンを抜け出し、ラーニングゾーンの外側にあるのがパニックゾーンです。
パニックゾーンは、その名の通り「混乱の領域」であり、今まで身につけてきたスキルや知識が全く通用しないゾーンです。
他のゾーンと比べても何から始めたらいいのか、何に手をつけたらいいのかわからない状態となるため、思考停止してしまう人も多いです。
また、不安やストレスを抱えやすく、自分にとってキャパシティオーバーな状態となるため、肉体的、精神的支障をきたしてしまうでしょう。
つまり、自分の持つスキルが全く通用せず、キャパオーバーな状態「パニックゾーン」という危険な状態ということです。
そのため、成長のためにはコンフォートゾーンを抜け出すことが大切ですが、逆に成長の機会を妨げてしまう可能性のあるパニックゾーンには入らないよう注意しなければなりません。
コンフォートゾーンがわかる3つの具体例
コンフォートゾーンをわかりやすく説明するため、ここでは具体的な例を3つ紹介します。
毎日同じ仕事を繰り返すルーティン
毎朝出社し、いつもと同じような仕事を繰り返すルーティンはコンフォートゾーン内にいると言えるでしょう。
例えば、毎日同じ書類の作成をする作業、決められたことを決められた通りに取り組む作業など、いつもと変わらない仕事を毎日繰り返していることはコンフォートゾーンとなり、安定、安心感の得られる空間となります。
既に習得済みのスキルの範囲内で業務を行う
過去に習得したスキルがあれば、今の仕事を100%こなせる状態であるのも、業務に対する自信や安心感があり、ストレスを最小限に抑えられるコンフォートゾーンと言えるでしょう。
今のスキルや知識を活用することで業務を円滑に進めることができるため、大きな問題を引き起こしたり、何度もエラーが発生するようなことを避けられます。
慣れ親しんだオフィスや作業場での仕事
毎日異なる場所で作業する、関わる人が異なるなどのケースは、安心できる環境ではないため、コンフォートゾーンにいるとは言えません。
しかし、同じオフィスで毎日会って、仕事をしている人や話す相手が同じという環境はコンフォートゾーンと言えます。
毎日同じ環境であれば、業務に必要な設備やツールがどこにあるのか把握できていますし、既に周囲との関係性も築かれているため、業務もスムーズに進められます。
いつもと変わらない慣れ親しんだ環境は、安心感のある領域と言えるでしょう。
コンフォートゾーンに留まり続けるデメリットとは?
コンフォートゾーンにいることで、人はストレスを感じにくく、快適さを感じられるようになります。メンタル面を見ると良いことばかりですが、留まり続けることでデメリットとなる部分も多いのです。
ここでは、なぜコンフォートゾーンに留まると良くないのかその理由を2つ紹介します。
退化してしまう
人は居心地の良い場所に留まり続けると、その場所から動きたくなくなります。快適だからリスクがあるところは避ける、現状維持が良いと思うようになってしまうのです。
つまり、時が止まった状態となり、その先に進もうとしなくなってしまいます。成長の機会を逃す可能性が高くなり、常に楽できる環境を求めるようになってしまうでしょう。
この状態が続くと新しいスキルを身につけたり、経験したりする機会が限られ、挑戦するための目標設定がしづらくなってしまいます。
その結果、コンフォートゾーンに留まり続けることで挑戦を避け、成長する機会がなくなり、自分自身を退化させてしまうことにつながるのです。
進化させるためには新しいスキルを習得したり、新たな環境や業務に取り組むことも大切です。コンフォートゾーンは人を退化させるデメリットがあるので、留まり続けることは決して良いこととは言えません。
今ある快適な領域が永遠に続くとは限らない
仕事や人間関係など、今当たり前にある快適な環境は永遠に続くとは限りません。
例として何年も続けている仕事にフォーカスして解説します。
何年も続けて働いている場合、すでに職場環境や業務内容、働く時間などに慣れ、快適さを感じる空間が出来上がってくるでしょう。
この状態が続くと、「新しいリスクを負ってまで今の状況は変えたくない」と感じてしまい、留まろうといった気持ちが強くなるのです。
この環境が退職するまで100%保証されているなら問題ありませんが、今は終身雇用も徐々になくなりつつあり、働き方も大きく変わってきています。
自分はこのままで良くても、周りの環境はどんどん変わっていくことも考えられ、現状維持し続けることで会社から成長していないと判断されれば、リストラなどのリスクも出てくるのです。
安全な環境はいつしか危険な場所となり、リスクが高くなることもあるため、いつまでも同じ環境が続くとは思わず、早めにコンフォートゾーンから抜け出すことが大切です。
コンフォートゾーンを抜け出すことで得られる5つのメリット
コンフォートゾーンは、パニックゾーンに入らない程度に抜け出すことでさまざまなメリットを得られます。
ここでは抜け出すことで得られる5つのメリットを紹介するので、「抜け出したい」と思っている方は参考にしてみてください。
新しい経験を獲得することができる
コンフォートゾーンは、普段の景色と変わらない日常を送り続ける、安心できる環境であるため、新しい経験をすることはありません。
しかし、抜け出すことでたくさんの新しい経験と出会うことができます。
例えば、別のチームや部署に参加し、新しいプロジェクトに取り組むことで、今までにはなかった新しい経験ができるほか、スキルアップも望むことが可能です。
今までとは環境が異なるため、不安や緊張感のある精神状態になることもあるでしょう。しかし、今までとは異なる問題や課題に直面し、それに対する解決策を見つけることで、さまざまな成長の機会を得られます。
人は経験を積むことで一歩ずつ成長していけるため、停滞していると感じている方は、コンフォートゾーンを抜け出してみてください。
自分に自信がつく
コンフォートゾーンを抜け出すことは、自分に自信が生まれることにもつながります。
例えば、新しいスキルを学ぶことで、今まで対応できなかった仕事も難なくこなせられるようになります。そうすることで自信につながり、新しいことへも挑戦してみようといった意欲も湧いてくるようになるのです。
また、コンフォートゾーンを抜け出すことは、未知の領域に踏み込むことになります。困難な状況に直面したときに、それを乗り越えられれば自分の成長を実感し、自信を持てるようになるのです。
コンフォートゾーンを抜け出して自信を持てるようになるには、経験と努力が必要不可欠になるため簡単なことではありません。時には失敗し、落ち込むこともあるかもしれませんが、根気強く続けることで自分自身を成長させることができ、自信を持てるようになるでしょう。
自己成長につながる
コンフォートゾーンを抜け出すことで、新しい経験や学習を通して自分の能力を開発できるようになり、自己成長につなげることができます。
また、コンフォートゾーン内にいるときは比較的安定した業務を行いますが、抜け出すことは新しい挑戦の領域に入り込むことになります。不安や緊張があり、リスクなども存在しています。
必ずしも自分の思い通りになるとは限りませんが、設定した目標を達成できたり、失敗も経験することで新しいスキルを身につけられるようになり、自分自身の成長につなげられます。
特にリスクは人が避けたがる道ですが、それを経験することで今まで以上に成長できる可能性もあるため、コンフォートゾーンから抜け出した方が成長できる機会は多いと言えるのです。
クリエイティビティを高められる
コンフォートゾーン内では、既存のパターンやルーティンにとらわれがちです。よって、脳内には新しい刺激はなく、これまでになかったアイデアを発想しようとはしません。
しかし、コンフォートゾーンを抜け出し、新しい挑戦をすることで異なる視点やアイデアを得る機会が生まれます。
今までにない経験や刺激を与えることで、クリエイティブな思考を刺激し、新たなアイデアの発想につながることがあり、クリエイティビティを高められます。
コンフォートゾーンを抜け出すことは、停滞していた思考を動かすきっかけにもなります。既存のパターンを繰り返している方は、それらを崩せるよう努力することを検討しましょう。
意欲を高めることができる
コンフォートゾーン内では、日常の業務や環境に慣れてしまうため、モチベーションが低下してしまう恐れがあります。
しかし、そこから抜け出して経験のないプロジェクトなどに取り組むことで、新鮮さを感じ、意欲を高めることが可能です。
また、経験のないことに挑戦し、成果を得られるとします。そうするとやりがいや達成感を得られ、もっと挑戦してみたいといった気持ちになります。
安心できる日常は、メンタルも安定し、精神的には優しいと言えるでしょう。しかし、同じことの繰り返しは人のやる気を低下させる要因の一つにもなります。そのため、「リラックスして取り組める環境ではあるけど、意欲が湧かない」と悩んでいる方は、コンフォートゾーンから抜け出すことも検討してみてください。
コンフォートゾーンを抜け出す3つの方法
コンフォートゾーンには良い部分もあり、慣れることで成長の機会を妨げる現象であることがお分かりいただけたかと思います。
そのため、「留まり続けることはよくない、早く抜け出したい」と思っている方も多いのではないでしょうか。
ここではコンフォートゾーンを抜け出す3つの方法を紹介します。
新しいことに積極的に挑戦する
コンフォートゾーンを抜け出すための方法として、最も良いのが「新しいことに積極的に挑戦する」ことです。
そもそもコンフォートゾーンは、既存のパターンやルーティンを繰り返すことになるため、新しいことに挑戦すること自体、コンフォートゾーンを抜け出しているとも言えます。
そのため、慣れ親しんだ環境にいる状態で停滞していることに悩んでいるなら、第一歩として積極的に挑戦することから始めましょう。
挑戦と聞くと、何か大きなプロジェクトに取り組んだり、自分では不可能と思っているものに挑戦したりと、大きなものをイメージしてしまう方もいるかもしれません。
しかし、抜け出すためには、挑戦であれば些細なことでも問題ありません。例えば新たな業務を行うために、既存の取得している資格ではチャレンジできないなら、まずは資格を取得するための学習から始めるのも新たな挑戦と言えます。
無理をしすぎるとパニックゾーンに入ってしまう恐れもあるため、まずは一歩踏みだす程度で気軽に挑戦することから始めてみてください。
リスクをとる行動を選ぶ
コンフォートゾーン内にいると、「ストレスのかかることはしない」「安心感のある環境にい続けたい」といった気持ちになるため、そもそもリスクを取る行動は選びません。
しかし、抜け出すにはリスクを取ることが重要と言えます。リスクのある行動をすることによって、未知の領域にも足を踏み入れてみようといった気持ちが湧いてき、自分自身の成長にもつなげられます。
挑戦にはリスクが付き物なので、コンフォートゾーンから抜け出したいと思っているなら、少しのリスクは取る行動を選ぶようにしましょう。
しかし、リスクにはバランスと限度が大切です。無謀な挑戦はかえってモチベーションの低下につながりますし、パニックに陥ることもあります。
そのため、リスクを取るときは無計画ではなく、しっかりと計画を立てた上でリスクのリターンや影響を慎重に考慮し、取り組みましょう。
他人と積極的に交流する
今まで関わったことのない人と積極的にコミュニケーションを取るのも、コンフォートゾーンを抜け出すための方法の一つです。
コンフォートゾーン内で過ごしていると、基本は一緒に仕事をしている同僚や、上司としかコミュニケーションを取らず、他の人とは積極的に交流しようとしません。その理由は、関わったことのない人と話すことで、緊張や不安な状態となり、安全な領域ではなくなってしまうからです。
コンフォートゾーンを抜け出したい人は、他人と積極的に交流することを避けず、自分から交流を深めるよう努力しましょう。
そうすることで、いつも通りの行動パターンを抜け出すことができますし、自分とは異なる経験を持っている人と対話することで脳内を刺激し、新しい発想が生まれてくることもあります。
他人と積極的に交流することはそこまで難しい目標設定ではありませんし、誰でも挑戦できるはずです。コンフォートゾーンを抜け出したい人は、日頃関わらない人との交流を深めてみてください。
コンフォートゾーンを抜け出す際に知っておきたいポイント
コンフォートゾーンを抜け出す際には、あらかじめ知っておきたいポイントが5つあります。
目標の設定と具体的な計画を立てる
コンフォートゾーンを抜け出す方法の一つとして、新しいことに挑戦することがあげられますが、取り組む際には目標の設定と具体的な計画を立てるようにしましょう。
思いつきの挑戦は失敗のリスクが高まり、何度も失敗することでやる気が低下する恐れがあります。
モチベーションの低下はコンフォートゾーンへ逆戻りしたくなる要因の一つにもなるため、新たなことに挑戦する際には「何を達成したいか」「達成のためにどのようなプランを立てるべきか」しっかりと考えてから取り組みましょう。
反省と改善も忘れずに行う
コンフォートゾーンを抜け出そうと新しいことに取り組むと、必ず失敗を経験したり、挫折を経験したりします。
失敗をすると落ち込みやすくなりますが、前を向いて同じようなミスをしないよう反省と改善を忘れずに行いましょう。
「何度も失敗するからいいや」と投げやりな気持ちになっては再びコンフォートゾーンへ入りたい気持ちが強くなってしまいます。
モチベーションを高く保つためにも反省と改善が大切になるため、挑戦したあとの行動も丁寧に取り組むようにしましょう。
自分自身を厳しく接することも大切
コンフォートゾーンの特徴は、何といってもその状態から抜け出したくない気持ちになることです。思い切ってラーニングゾーンに挑戦してみたとしても、コンフォートゾーンに戻りたいという気持ちも出てくるでしょう。
そんなときは、できる限り自分自身に厳しく接するようにしましょう。
気持ちの面も非常に大切になるため、抜け出そうと決めたら抜け出せるまで強い気持ちを持って取り組みましょう。
リラックスする時間も必ず作ろう
「コンフォートゾーンを抜け出す=感じるストレスが強くなる、不安が強くなる」でしょう。コンフォートゾーンを抜け出すことで自分自身を成長させられるメリットがある反面、精神的には大きなダメージを受けることもあります。
そのため、ストレスを強く感じ、疲れてしまったときにはリラックスする時間も作るようにしましょう。
例えば自分が好きな趣味に取り組んだり、休日はしっかり休んだりと、ストレスを解消するための行動も忘れないようにしましょう。
心理的なサポートを受ける
リラックスする時間を作っても不安やストレスがなかなか解消されない方は、心理的なサポートを受けることもおすすめです。
例えば、溜め込みやすく、不安な気持ちが強くなりすぎる場合は、同僚や家族、友人など自分のことを知っている人に話を聞いてもらうのも有効的な方法の一つです。
誰かに溜め込んだ気持ちを話すことは、ストレスや不安を少しでも楽にすることができます。
一人で抱え込み、悩む時間が多ければ多いほどコンフォートゾーン内に戻りたいといった状態にもなりかねないため、初めて新しいことに取り組む方は誰かに相談するなどサポートを受けるようにしましょう。
まとめ
コンフォートゾーンに留まり続けることは、心の安定にはつながるものの、成長やチャレンジの機会が制限され、ずっと同じ場所に留まり続ける原因の一つとなってしまいます。
特に「将来的にこうなりたい」といった目標がある人は、早めにコンフォートゾーンから抜け出す努力をしなければなりません。
今回紹介した内容では、抜け出す方法の一つに「新しい挑戦」などをあげましたが、気持ちと行動一つでコンフォートゾーンは簡単に抜け出せます。
既存のパターンや行動がいつも同じだと悩んでいる方は、紹介した内容も参考にしながら取り組んでみてください。